総務部門は担当部署のない業務を遂行することが多いため、仕事内容が多岐にわたります。データ入力や管理、書類作成、備品管理など幅広い仕事を担うため、人手不足や業務負担の偏りなどが起こりやすいのが課題として挙げられます。そこでおすすめなのが、AIに業務をサポートしてもらうことです。
本記事では、総務業務にAIを導入するメリットや活用事例、注意点を解説します。総務業務の負担を軽減したい、コストを削減したいという悩みがある方はぜひ参考にしてください。
AIで代替可能な総務の仕事
総務部門の仕事のうち、パターン化されている業務はAIが得意とする領域です。明確なルールや手順に従って行われる業務を、AIは効率よく処理できます。
たとえば、備品や資材の在庫管理に画像認識AIを導入すると、自動で数量を集計することが可能です。これにより、人手で定期的に個数を数える手間が省けます。また、会議の議事録作成では音声認識AIを使うと、リアルタイムで自動的に文字起こしができるため、作業効率が大幅に向上するでしょう。
決まった作業を繰り返す業務は、AIを活用すると高い精度でスピーディーに処理することが可能です。
AIでは代替が難しい総務の仕事
総務部門の業務の中には、AIでは対応が難しい分野も存在します。AIは学習したデータを基に処理を行うため、ゼロから新しいものを作り出す仕事では人間の力が不可欠です。たとえば、イベントの企画立案ではAIからの提案だけでは不十分な場合があります。
また、感情やその場の雰囲気を読み取る能力が求められる業務も、現状のAIでは困難です。たとえば人事評価においても、一定の基準に基づく判断は可能ですが、個人の特性や複雑な背景を考慮するには限界があります。
人間にしかできない仕事も多く存在するため、総務の仕事がすべてAIに取って代わられることは考えにくいでしょう。
総務にAIを導入するメリット
総務にAIを導入することで得られるおもなメリットは、次の4つです。
- 人間にしかできない仕事に集中できる
- 業務の属人化を解消できる
- コストを削減できる
- 業務にかかる時間を短縮できる
順に解説します。
人間にしかできない仕事に集中できる
AIの導入によって、総務部門の業務効率が大幅に向上します。単純作業や反復的なタスクをAIに任せることで、人間は戦略立案、問題解決、従業員サポートなど、より創造的で付加価値の高い業務に注力できるようになります。
AIは人間の感性や判断力が必要な場面が苦手です。人間にしかできない業務に集中できるようになると、総務部門の役割がより戦略的になり、組織全体の生産性向上に大きく貢献することでしょう。
業務の属人化を解消できる
総務部門の業務は特定の個人に依存しがちですが、AIの活用でこの課題を克服できます。
個人が持つ知識やノウハウをAIシステムに組み込むことにより、組織全体で共有し、継承することが可能に。誰でも一定の品質で業務を遂行できるようになるため、担当者の不在や退職時のリスクも大幅に軽減されます。
業務の属人化を解消できることで、組織の安定性と効率性の向上につながります。
コストを削減できる
AIを導入することで、総務部門のコストを削減できます。人件費や紙書類の保管にかかる経費の削減が可能になり、他に予算を割けるようになるのです。
また、物理的な保管スペースの削減により、オフィスをより効率的に使うことも可能に。コストを削減することは単に経費を抑えるだけでなく、企業の競争力強化や新たな投資機会の創出にもつながります。
業務にかかる時間を短縮できる
AIの導入により、従来人間が行っていた時間のかかる作業を大幅に効率化できます。データ入力や文書管理などの定型業務は、AIが高速かつ正確に処理。業務時間の大幅な短縮が可能になります。
また、単調な作業をAIに任せることでより戦略的な仕事に集中できるため、従業員のモチベーションや仕事の満足度を高めることにもつながるでしょう。
総務部門のAI活用事例
総務部門におけるAIの活用事例を5つご紹介します。どのように活用できるのか具体的にイメージできないという方は、ぜひ参考にしてください。
AI チャットボットで社内の問い合わせに対応
総務部門は、従業員からの問い合わせ対応に多くの時間を割かれがちです。そこでAIチャットボットを活用すると、自動での問い合わせ対応が可能になります。
たとえば、株式会社ラクスの「チャットディーラー」では、よくある質問への自動応対機能を備えています。人間の対応が必要な問い合わせのみを選別し、総務担当者の業務効率を大幅に向上させることができるのです。あらかじめ「庶務」「施設管理」「届出変更」など400種類以上のテンプレートが用意されているため、導入時の負担も軽減されます。
実際に導入した企業では、問い合わせ業務にかかる時間を数十時間も削減できたケースもあり、その効果は絶大です。
AI-OCR で文書管理を電子化
膨大な書類の中から必要な情報を探し出すのは、総務部門の大きな負担となっています。そこでAI-OCRを活用して文書管理を電子化すると、該当文書の検索時間を大幅にカットすることが可能です。
株式会社日立ソリューションズの「活文 Contents Lifecycle Manager」は、属性や全文、簡易検索など多様な方法で文書を検索できるため、必要な情報を探し出す時間を短縮できます。ユーザーごとにアクセス権を設定すれば、セキュリティ面でも安心です。
導入企業の中には、文書検索にかかる時間を3分の1以下に短縮できたケースもあり、業務効率化の効果は明らかといえるでしょう。
AI搭載 の勤怠管理システムを利用
勤怠管理は、不正打刻のリスクやデータ収集の煩雑さなど、多くの課題を抱える分野です。しかし、AI搭載の勤怠管理システムを使えば、本人性を担保しつつ勤怠管理を自動化できます。
jinjer株式会社の「ジンジャー勤怠」は、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット、ICカードなど、多様な打刻方法に対応しているため、柔軟な働き方にも適応します。管理者もスマートフォンアプリで勤怠の承認や従業員の管理ができるため、場所を問わず迅速な対応が可能です。
導入企業の中には、年間1,000部もの勤怠関連書類のペーパーレス化に成功した例もあり、コスト削減にも貢献しています。
画像処理AI で備品管理を電子化
備品管理は貸出や返却の処理が煩雑になりやすく、総務部門の大きな負担となっています。そこで役立つのが画像処理AIを活用した備品管理システムです。
アストロラボ株式会社の「備品管理クラウド」は、JANコードや製品ラベルをスマートフォンのカメラで撮影するだけで備品登録ができます。貸出や返却も従業員がスマートフォンから申請できるため、備品管理にかかる時間や手間を大幅に削減できるのです。
導入企業の中には、備品の紛失がゼロになり、無駄な再購入コストを削減できたケースもあります。効率化とコスト削減の両面で、大きな効果が期待できるシステムです。
AIが代行 して自動で電話応対
総務部門では社外からの電話対応も多く、作業の中断が頻繁に起こりがちです。AIによる自動電話応対システムを使うと、取り次ぎや折り返しを自動対応してくれるため、必要な電話応対にのみ集中できます。
株式会社ソフツーの「ミライAI」は、24時間自動で電話応対を行い、必要に応じて折り返し対応も行います。折り返しが必要な場合は、会話内容を要約して設定した連絡先に送信するため、内容を確認した上で効率的に対応できます。
導入企業では、電話応対をAIに任せることで担当者の負担が大幅に軽減されただけでなく、人件費の削減にも成功しています。AIの導入は電話応対にかかるコストを削減したい場合にもおすすめです。
総務業務にAIを導入する際の注意点
総務業務にAIを導入することには多くのメリットがある一方で、注意しなければならない部分もあります。次の3点を押さえたうえで、導入を検討しましょう。
- 導入する目的を明確に設定する
- 従業員に説明して理解を得る
- 段階的に導入する
導入する目的を明確に設定する
AIツールはたくさんあり、総務業務のさまざまな側面に活用できます。しかし、闇雲に導入するのではなく、明確な目的を設定することが重要です。
目的を明確にすることで、業務に最適なAIツールを選択できるだけでなく、導入後の効果測定も容易になります。導入後のミスマッチを避けるためにも、導入によって得たい未来をはっきりさせましょう。
従業員に説明して理解を得る
AIの導入には、従業員の理解と協力が不可欠です。導入の目的と期待される効果、AIが従業員の業務をサポートし、より創造的な仕事に集中できるようになることを伝えましょう。
同時に、プライバシーやデータセキュリティに関する懸念にも丁寧に対応することが重要です。従業員の不安を軽減し、AIとの協働に対する前向きな姿勢を促すことで、スムーズな導入と効果的な活用が可能になります。
段階的に導入する
AIの導入は、一度にすべての業務に適用するのではなく、段階的に進めましょう。まず小規模なプロジェクトや特定の部門から始め、成功事例を作ることが重要です。段階的な導入により、リスクを最小限に抑えつつ、AIの効果を最大化できます。
また、各段階での学びや課題を次の段階に活かすことで、より効果的な導入が可能になります。
まとめ
総務部門は仕事内容が多岐にわたるため、人手不足や業務負担の偏りなどが起こりやすいのが課題です。そこでAIを導入すると、属人化の解消やコスト削減、業務効率化などの効果が得られます。ぜひ本記事の内容を参考にして、総務部門へのAI導入をご検討ください。
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