「従業員のモチベーション維持や成長につながる人事評価をしたいが、なかなか仕組みが定まらない」とお悩みではありませんか?効果のある人事評価を行うためにはそれなりの業務負担が伴うため、労働力不足に悩む企業ではなかなか力を入れて改革することは難しいと感じるかもしれません。そこでおすすめなのは、人事にAIを導入し活用することです。
本記事では、人事分野にAIを活用した成功事例10選をご紹介します。人事×AIのメリットやデメリットについても解説していますので、人事業務に課題を抱えている担当者の方はぜひ参考にしてください。
人事分野におけるAI活用とは?
人事分野では、従業員の評価や採用、人事への問い合わせ対応などでAI活用が進んでいます。労働力不足に悩まされている企業では、従業員の成長につながる人事評価制度の確立が課題です。一方で、しっかり運用しようとすると、人事担当者の業務負担が大きくなってしまいます。
また、人事評価では担当者の長年の経験と勘も作用してしまい、基準に基づいた公平な評価ができていない側面もあります。よって、AIを活用して担当者の負担を軽減しながら、公平な評価を補助する動きが高まっているのです。
人事分野でAIを活用する3つのメリット
人事分野でAIを活用することには、次のようなメリットがあります。
- 人事部門の業務効率化ができる
- 客観的な人事評価ができる
- 膨大なデータをもとに人事評価ができる
人事部門の業務効率化ができる
人事分野にAIを導入することで、業務効率化が見込めます。
人事評価の代表的な方法に、評価シートを活用するものがあります。従業員に記入を依頼して後日回収し、回答をもとに評価する方法です。この方法は、従業員が提出を忘れてしまったときに催促するといった手間や時間、評価を見落としてしまうなど人為的ミスにつながることもありました。AIを活用すれば、これまで時間や手間をかけていた部分を自動化できるため、人事関連業務の生産性を上げられます。
また、人事に関する問い合わせも、繁忙期に殺到すると負担の大きいものです。AIチャットボットを活用すれば、問い合わせに対する対応も自動化できます。
客観的な人事評価ができる
人事分野にAIを導入するメリットには、客観的な人事評価ができる点も挙げられます。
人間が人事評価を行うと、一定の基準は設けられているものの、担当者によって評価にズレが生じてしまうことがあります。結果として納得感のない人事評価になってしまい、従業員のモチベーション低下につながっていました。
AIは人間による評価よりも感情的なバイアスがかかりにくいため、基準に沿った公平な評価が実現できます。
膨大なデータをもとに人事評価ができる
AIを活用した人事評価は、膨大なデータをもとに人事評価ができるのもメリットです。
人事評価は複数の評価項目を設けて多角的に判断することで納得感を高められますが、人間の手で行うのには限界があります。AIは、データの蓄積や分析が得意かつ短時間で評価を出せるのが特徴です。
従業員の健康状態や勤怠情報なども活用して、幅広い視点からの人事評価が可能になります。
人事分野でAIを活用するデメリット
人事分野でAIを活用するデメリットは次の2つです。
- 導入コストがかかる
- 人事の基準がブラックボックス化する可能性がある
導入コストがかかる
AIシステムの選定や導入で工数・費用がかかる点はデメリットの1つです。システムの使い方や業務フローなど従業員への教育も必要になるため、費用面だけでなく教育面でもコストがかかってしまいます。
費用面では補助金を活用することで負担を軽減できます。次のような補助金はAI導入で利用できるため、開発時や導入時に活用を検討するとよいでしょう。
補助金名 |
概要 |
補助額・補助率 |
IT導入補助金 |
バックオフィス業務の効率化等の付加価値向上につながるITツール導入を支援 |
補助額:30〜450万円 補助率:1/2 |
ものづくり補助金 |
中小企業・小規模事業者が実施する設備投資にかかる費用の一部を補助 |
補助額:100〜1,000万円 補助率:中小企業1/2、小規模事業者2/3 |
持続化補助金 |
小規模事業者が取り組む販路開拓や生産性向上の取り組みを支援 |
補助額:最大50万円 補助率:2/3 |
参照:中小企業庁
教育の面でも、AIの開発会社がセミナーを行ったり資料を提供したりとサポートが受けられます。補助金やサポートをうまく活用することで、コスト面での課題は解消できるでしょう。
人事の基準がブラックボックス化する可能性がある
AIによる人事評価は評価の基準が見えにくくなり、従業員から反発される可能性もあります。AIによる評価に対して疑問が生じても基準や理由を問えないためです。
納得感のない人事が行われれば、モチベーション低下につながってしまいます。次のような点に気をつけて、人事評価を行うようにしましょう。
- できるだけ評価基準を開示する
- 最終的な意思決定は人間が行う
- 人事評価の理由を説明できるようにする
人事×AIの活用事例10選
ここからは、人事にAIを活用した事例をご紹介します。具体的なイメージが沸かない方は、ぜひ参考にしてください。
AI を活用して従業員一人ひとりに焦点を当てた人事評価を実現(明治安田生命)
明治安田生命株式会社は全国1200カ所の拠点をもち、毎年4月の人事異動では2,000〜3,000人が異動します。従来は年に一度の人事評価もすべて人の手で行っていました。人手でやることの限界や業務の属人化、人員配置の正しさに課題を感じ、人の目が届かない部分までカバーすべく人事のAI活用を決めました。
実証実験として3,000人の従業員に任意で協力してもらい、当社の各分野で活躍するための素養を統計的に特定。従来、人事担当者が定性的に把握していた行動特性を定量化でき、各分野で求められる行動特性が明らかに。これにより、自分に向いているポジションが明確化し、より一人ひとりにあったキャリア育成が可能となりました。
AI を活用して動画面接の評価を省力化(ソフトバンク)
ソフトバンク株式会社では、動画面接の評価にAIシステムを導入しています。目的は、応募者の選考会場への異動にかかる時間や費用を軽減することです。AIシステムはインターンシップの選考で提出された動画データと、熟練の採用担当者による評価などを学習しており、新たに提出された動画の評価を自動で算出します。
AIの導入により、動画面接の選考作業にかかる時間は従来と比べて約70%削減すると見込まれています。AI活用で生まれた時間は就労体験型のインターンシップ拡充や求める人材へのアプローチなどに充て、さらに充実した人事採用へと歩みを遂げています。
自治体の人事異動事務を最適化するAIを開発(NECソリューションイノベータ)
NECソリューションイノベータ株式会社では、自治体の人事異動業務や人員配置の効率化・最適化を支援するAIを開発しました。人事異動業務は専門性のあるベテランを必要とする属人的な業務です。このAIシステムを活用することで、過去の移動履歴や人事情報を分析し、異動候補者の選出や最適な配属先の選定が可能となります。
福島市との実証実験では、AIシステム導入前と比べて異動候補者の選出にかかる時間が25%減、配属先の検討(異動案作成)にかかる時間が17%減、異動案のチェックにかかる時間が92%減と、作業時間を大幅に削減できました。
配属マッチングシステムで新卒配属を最適化(サイバーエージェント)
株式会社サイバーエージェントでは、新卒入社の従業員を適材適所に配属するべくAIを活用した配属マッチングシステムを導入しています。このシステムは、本人の希望や適性情報、特性情報などのデータをもとに、最も活躍できる部署を導き出してくれます。
従来は担当者の経験や主観がベースになっており、属人的な判断で配属先が決定していました。システムの導入により、客観的な情報も加えた判断ができるため、より本人に適した配属を実現できます。
新卒採用でAIチャットボットやVRアプリを活用(セプテーニ)
株式会社セプテーニ・ホールディングスでは、新卒採用でAIチャットボットやVRアプリを活用しています。AIチャットボットは、新卒者が就職活動での会社理解を深めるために、個人に最適化された情報を提供する目的で導入されているものです。また、入社後の早期活躍促進を目的として、内々定者向けに社内での1日の業務や働く環境を自宅で体験できるVRアプリも提供しています。
セプテーニグループでは、これまでに蓄積した膨大な人材データをAIを活用して専門医研究を行う「人的資産研究所」を設置しています。AIチャットボットやVRアプリはその研究結果から開発されたものです。キャリア形成やパフォーマンス向上につながる人事×AIの活用事例といえます。
自然言語処理を活用して配属の最適化を実現(KPMG)
KPMGでは、多様化する人材と業務の最適なマッチングを実現するAIシステムを開発しました。このシステムは、自然言語処理を活用しています。従業員一人ひとりの特徴や各部署の業務の特徴を抽出し、特徴同士を照らし合わせて従業員と部署の適合度を判定します。
マッチングシステムを利用することで、配属案作成の業務効率化が可能です。また、人間では考えつかなかったマッチングが生まれることもあり、驚きの配属案が出てくることも期待できます。マッチングの根拠が示されるため、納得感のある人事が実現します。
AI によるデータ分析で適切な採用や離職防止を実現(アッテル)
株式会社アッテルでは、データとAIを活用して人事の課題を解決するサービスを提供しています。10万人のデータを活用して開発された「アッテル適性検査」は、AIが応募者の価値観の可視化や活躍可能性の判断を行います。
ほかには従業員の本音を引き出す質問をAIが作成して離職防止につなげる「アッテルサーベイ」、データとAIによる分析で配属後のパフォーマンスを予測し最適な配置をシミュレーションできる「アッテルクラウド」も提供。感覚的な人事から抜け出し、データをもとにした根拠のある組織づくりを実現できるサービスです。
AIチャットボットで社内の人事関連問い合わせを75%自動化(クスリのアオキ)
株式会社クスリのアオキでは、問い合わせに対応する担当部署に約30人が在籍していますが、日々従業員から寄せられる問い合わせの対応や回答業務の煩雑さ、業務効率の悪さに課題がありました。そこで、問い合わせ対応の品質を落とさず、従業員とスムーズにコミュニケーションを取ることを目的としてAIチャットボットを導入しました。
人事だけでなく給与や福利厚生など約300件のQ&Aデータを登録し、運用を始めたところ、AIチャットボットにより75%の問い合わせを自動化することに成功。時間にして約3,500時間も効率化でき、担当者の業務負担や心理的負担を軽減できました。
AIアシスタントを構築して人事部門などの採用枠を約3割削減(IBM)
IBMのCEOであるアービンド・クリシュナ氏は、人事部門など非顧客対応の職種にかかわる26,000人のうち、約3割がAIに置き換えられると2023年のインタビューで明らかにしました。人事異動の記録や雇用認証書類の作成などの業務を、人間の代わりにAIができる仕事として挙げています。
IBMの人事部門では、過去6年間社内のAI主導型デジタルアシスタントの機能構築に取り組み、100以上のプロセスを自動化してきました。今後もAIでもできる単調な仕事は人間が行う必要がなくなり、自動化されていくことが予想されます。
AI を活用して人事施策を自動で最適化(HaKaSe Onboard)
HaKaSe Onboardは、データの収集や人事施策の検証・改善によって自動で最適化される機能をもつAIシステムです。
新入社員と配属候補先のメンバーのパーソナリティ診断の結果をもとに相性をスコア化。新入社員にとって適した配属先を見つけることに役立ちます。また、専用マイページ内では、個々に適した適応プランを閲覧可能。パーソナリティ診断の結果や早期に適応するための方法を確認できます。
従来は上司やマネージャーが評価や教育に多くの時間を費やしていましたが、AIを活用することで、個々に最適化された課題や改善項目が客観的かつ高い精度でわかります。効率よく必要な支援ができる点で、良い活用の事例といえるでしょう。
人事にAIを導入する際の注意点
人事にAIを導入する際には、次のような注意点を押さえておきましょう。
- 従業員にAI導入について説明する
- AIだけの判断で人事評価をしない
従業員にAI導入について説明する
AIを導入する前に、従業員に対して必ず説明しましょう。説明なく導入すると、従業員の不安や不満につながるおそれがあります。
説明すべき項目には、人事にAIを導入する経緯、期待できる効果、人事評価の基準などが挙げられます。特に「なぜAIを活用した人事が行いたいのか」「AIを導入することで従業員はどのようなメリットが得られるのか」を詳しく説明すると、理解を得られるでしょう。
一方的に導入するのではなく、AIについての理解を深めてもらえるようにアプローチすることが重要です。
AIだけの判断で人事評価をしない
人事評価をするときは、AIだけの判断に委ねないようにしましょう。AIが出した結果だけで人事評価をすると、理由を問うことができず、従業員の不満につながってしまいます。
AIはあくまで人事評価の補助ツールです。人事評価について質問があった場合にもしっかり答えられるよう、最終的に人間が判断することは忘れてはなりません。
まとめ
人事分野では、従業員の評価や採用、人事への問い合わせ対応などでAI活用が進んでいます。人の手で多くの時間と労力をかけて行っていた業務も、AIを活用することで効率化や負担軽減が実現できます。また、個人に最適化した人員配置ができる点でも、AIの活用は今後欠かせないものになってくるでしょう。人事に関する課題を感じているのであれば、AI導入もご検討ください。
オルツでは、パーソナル人工知能を中心としたAI活用・LLM開発・DX推進を行っております。自然言語処理や音声認識、画像処理など幅広いAIに対応しており、ヒアリングした内容をもとに、お客様に最適なAIをご提案します。
AIの開発や導入をご検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。