AI技術の発展は目覚ましく、近年ではビジネスの現場でも活用の幅が広がりつつあります。とくに企業競争の要とも言える“営業現場”では、業務効率化や生産性向上の観点から導入を進める企業も増えてきました。
しかし、経営者や営業マネージャーのなかには「具体的にどのような場面で活用できるのか」「どのようなメリットがあるのか」など、疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、営業現場でAIを活用する方法について具体的な企業事例とあわせて解説いたします。
またAI技術の発達により、一部では「営業職はなくなるのではないか?」と叫ばれることも増えてきました。その点についても、筆者独自の見解で解説いたしますので、ぜひ参考にしてみてください。
AIの台頭で営業職はなくなる?
AI技術は業務効率化や新たな価値創造のツールとして、様々な業種業界で活用の幅が広がってきています。営業職も例外ではなく、AIの活用が活発化しており「将来的には営業職がなくなるのではないか?」といった声も聞かれます。
しかし結論から言うと、AIによって営業職がなくなる可能性は低いのではないかと考えられます。たしかにAIは、顧客管理や資料作成などの多くの単純作業を自動化できるため、事務作業に関わる工数を大幅に削減できる一面があることは事実です。一方で、顧客との信頼関係の構築や相手のニーズを的確に汲み取ったうえで提案を行うといった、営業職の根幹となるエモーショナルな業務については、現状のAIでは代替が難しいと考えられます。
むしろAIは、営業担当者の作業負担を軽減して「本来の営業活動(商談や顧客対応)に集中できる環境を整えるツール」としての活用が進むと考えられるでしょう。営業職がAIに置き換わるのではなく、営業職がAIを活用して、さらなる業務効率化や生産性向上に役立てるといったイメージです。営業担当者はより多くの顧客と接点を持ち、深い信頼関係を構築して、より多くの案件を獲得できるようになります。
営業現場で起きている課題
AIの活用方法を検討する前に、まずは営業現場で起きている課題を把握することから始めましょう。
多くの営業現場では、下記のような課題が発生しています。
・事務作業が肥大化している
・人手不足や人件費高騰の波が来ている
・営業活動の難易度が高まっている
事務作業が肥大化している
顧客管理・商談管理・資料作成など、本来のセールス活動以外の事務作業に頭を悩ませている営業担当者の方も多いはずです。案件数が増えれば増えるほど、事務作業の負担が増大しますが、一方で事務作業の負担が増大することで、営業活動に割ける時間が少なくなってしまいます。
また近年では、働き方改革関連法によって時間外労働の上限規制が厳しく定められるようになりました。時間外労働は、原則として月45時間・年360時間までとなり、特別な事情がない限り超過は許されません。そのため営業担当者には、今まで以上に限られた時間のなかで高いパフォーマンスを出すことが求められます。
このような背景から、事務作業の肥大化は営業活動を進めるうえでのボトルネックになるため、優先して解決するべき課題だといえます。
人手不足や人件費高騰の波が来ている
多くの日本企業では、深刻な人手不足に悩まされています。この傾向はますます強まることが想定されており、株式会社パーソル総合研究所の調査によると、2030年には国内全体で約644万人の人材不足が発生すると言われています(別名「2030年問題」)。
また、同時に人件費高騰の波も押し寄せています。各社では、離職者防止のために人件費を上げざるを得ない状況に追い込まれているでしょう。人手不足のなかで採用難易度が上がり、採用コストの高騰も予測されています。
とくに近年では「ワークライフバランスを充実させたい」と考える求職者が増えつつあり、営業職は「ノルマがきつそう」というイメージから、人気が下火となる傾向にあります。今後は採用難易度がさらに高くなることが予想されるため、求職者が「働きたい」と思えるような労働環境の整備が求められるでしょう。
営業活動の難易度が高まっている
グローバル化による海外企業の参入、オンライン化による営業手法の変化などに伴い、営業活動の難易度は年々高まりつつあります。また経済状況の変化に伴い、顧客のニーズは年々複雑化を増しています。従来通りの営業手法ではうまくアプローチができず「なかなか案件につながらない」と悩む営業担当者の方も多いのではないでしょうか。
営業活動の難易度が高まることで、限られたメンバーにパフォーマンスが集中する状況となります。このような業務属人化が進むことで、組織全体でナレッジやノウハウを共有できないほか、離職した場合に業務が停止してしまうといったこともリスクとして挙げられます。
そのため、営業活動の難易度が高まっている現代だからこそ、基本業務には「誰でもできる」ような標準化が改めて求められています。
営業現場でAIを活用する方法
このような課題を解決するために、各社ではAIの活用が検討されています。
たとえば下記のような場面では、すでに現状でも多くの企業が活用を進めています。
・商談管理
・顧客管理
・顧客対応
商談管理
商談後には、第三者でも状況がわかるように議事録を残す必要があります。多くの場合、商談管理ツールやチャットなどにテキストで共有することが一般的でしょう。
わかりやすく記載をすることで、次回の商談前に状況を確認できたり、他のメンバーに案件を引き継ぎやすくできたりなど、さまざまなメリットが挙げられます。
しかし、議事録の作成には意外にも多くの時間がかかります。商談時にメモを取りながら作成することもできますが、それでは商談自体に集中ができない可能性もあるでしょう。また、商談を録音して商談後に聴き返すという方法もありますが、その場合は文字起こしの手間が別途かかります。
そのため、議事録の作成には「AI GIJIROKU」などのITツールの活用がおすすめです。Zoom・Skype・Microsoft Teamsなどのビデオ会議ツールと連携をするだけで、会議内容を自動で記録することができます。また、大規模言語処理モデル「LHTM-2」を活用したツールのため、議事録の正確な要約まで実現可能です。
独自の音声認識技術を活用しており、金融・法律・医療・ITなど、さまざまな分野の専門用語を認識できます。99.8%の音声認識精度で「誰が・何を発言したのか」を記録することが可能です。
議事録の作成に時間をかけず「会議終わりにもう議事録が作成されている」状態を実現できます。少しでもご興味のある方は、下記よりサービス資料をお問い合わせください。
顧客管理
顧客管理を徹底することで、顧客のニーズやタイミングを適切に把握して、受注率や満足度の向上につなげられます。
まだ顧客数が少ない段階であれば、Excelやスプレッドシートでの管理でも問題はありません。しかし、顧客数が一定以上になることが見込まれた段階で、ITツールの導入を検討しましょう。
Excelやスプレッドシートでの管理では、情報やステータスの更新が煩雑になり、ミスが発生する恐れがあります。また、顧客数が増えることで管理が行き届かず、アプローチのタイミングを見失うという懸念もあるでしょう。
ITツールを導入することで、顧客情報の管理をシステム化して、このようなミスを防ぐことができます。また、顧客情報のデータベースとAI技術を連携することで、顧客の属性や購買履歴に基づいて、最適な提案を行うことが可能です。
顧客対応
チャットボットや音声認識技術を活用することで、顧客対応を自動化することが可能です。FAQへの回答や簡単なお問い合わせ対応などをAIに任せることで、担当者はより複雑な業務に時間をかけることができます。
24時間365日の対応が可能なため、営業時間外や休業日でも顧客からのお問い合わせに対応できるようになります。また、AIはFAQのデータベースや過去の問い合わせ履歴に基づき、顧客の質問に対して正確な回答ができます。利便性を向上させることで、解約率の防止にも役立ちます。
具体的な実装方法としては「AIチャットボット」や「IVR(自動音声応答システム)」などの導入が挙げられるでしょう。一部のAIツールでは、顧客の声や文章から感情を分析することも可能です。分析結果に基づいて、顧客のニーズや不満を早期に察知することで、適切な対応をとることができるでしょう。
営業現場でAIを活用するメリット
営業現場でAIを活用することで、下記のようなメリットがあります。
・商談のパフォーマンスが向上する
・働き方改革につながる
・業務を標準化できる
商談のパフォーマンスが向上する
事務作業の負担を軽減することで、営業担当者が顧客との接点を増やしたり、より多くの時間を商談時間に当てたりなど、本質的な業務に時間を費やすことが可能になります。結果として受注率の向上につながり、会社全体の売上向上にも寄与することが期待できます。
とくに事務作業やお問い合わせ対応などの単純作業は、時間がかかるだけではなく、営業担当者の精神的な負担にもつながるものです。意識と時間をすべて商談に向けることができれば、営業担当者一人ひとりのパフォーマンス向上が見込めるでしょう。
働き方改革につながる
業務効率化や生産性向上への取り組みは、働き方改革にもつながります。残業時間を抑制したり、精神的な疲労を抑制したりすることで、社員が中長期的に働きやすい環境を整備することができるでしょう。
また働きやすい環境をつくることで、離職数が下がったり、求職者が集まりやすくなるといったメリットが挙げられます。多くの企業が人手不足で悩むなかで「人材に困らない」というのは、企業経営において非常に高い優位性を得ることにもつながります。
業務を標準化できる
AIが業務を代替することで、全体的な業務品質を標準化することができます。個々の担当者に依存することなく、安定した稼働を実現できる点はメリットであるといえます。
とくに営業現場では、大きなミスが命取りになる場面があります。たとえば「アプローチする顧客を間違えた」「相手の状況を把握できずに、誤った提案をしてしまった」といったミスは、失注につながる可能性があります。
人間が手作業で行う管理をAIに代替することで、このようなミスを最小限まで抑えることができるでしょう。
営業現場でAIを活用した企業事例
実際に、営業現場でAIを活用した企業事例をご紹介いたします。
株式会社大塚商会
株式会社大塚商会では、dotDataというAIを活用した分析サービスを導入して、営業活動の効率化に取り組まれています。過去20年以上にわたる営業データから、商談につながる特徴を抽出。市場や顧客ニーズを的確に掴み、商談先を提案する仕組みです。
過去5,000万件以上の商談記録と12億件以上の売上明細をもとに、AIがビッグデータを学習し、わずか半年で7万件以上の商談が提案され、商談数が3倍に増加したようです。
営業担当者のスケジュールが空いている時間に、前後の訪問場所から移動可能な地域を特定して商談先を提案するなど、営業活動の効率化にも貢献しているようです。
参照:大塚商会AIが半年で7万件以上の商談を提案 | dotData
日本生命保険相互会社
日本生命保険相互会社は、営業職員の業務効率化に向けて、AIを中心としたITツールの活用に取り組まれています。
2019年には、営業職員がロールプレイング(模擬商談)をスマートフォンで自撮りし、その内容をAIが判定するというシステムを導入しました。具体的には、AIが「表情」「ジェスチャー」「スピード」などをもとに判定を行い、不十分な点まで指摘をしてくれるという仕組みです。
元来、ロールプレイングには"恥ずかしさ"を感じる社員も数多くいましたが、今回の取り組みでは、その"恥ずかしさ"を軽減して、営業職員のスキルを最大限に引き出すことが狙いにあるようです。
参照:営業トークの「威力」をAIが判定、日本生命がアプリ搭載スマホ4万台を職員に導入 | 日経クロステック(xTECH)
株式会社桧家ホールディングス
株式会社桧家ホールディングスでは、IBM Watsonを活用したチャット型のQ&Aサービス「ひのくまコンシェルジュ」を導入しました。
LINE WORKSのトーク画面からテキスト(または音声)で質問を投げかけることで、AIが最適な回答を提案してくれるという仕組みです。
同社では「新人の営業担当者でも素早く正確な提案ができるように」という狙いで、本システムを導入。実際に、本システムを積極的に活用する担当者とそうでない担当者を比較すると、受注件数には約1.5倍の差があったようです。
参照:ヒノキヤグループのAI営業支援サービス「ひのくまコンシェルジュ」、導入から1年5ヵ月で受注件数に成果|住宅産業新聞社
横浜銀行
株式会社横浜銀行では、顧客関係管理システムにAIを活用した「営業応接記録チェック」機能を開発しました。
この機能の導入により、営業担当者が応接対応した際の記録を、AIが1次チェックすることが可能になりました。役職者が応接記録をチェックする時間を削減して、業務効率化につなげることができるようです。
参照:横浜銀行、営業応接記録のモニタリング工数をAIのAPI連携で削減 - DIGITAL X(デジタルクロス)
jinjer株式会社
jinjer株式会社では、RPAサービス「Autoro」を導入して業務効率化に取り組まれています。
もともとはインサイドセールスの部署で「営業活動で発生する付随業務に時間がかかり、メイン業務である顧客折衝に集中できなかった」という課題感から、RPAを導入したようです。
導入後には、たとえば比較サイトからお問い合わせが発生した際に、SFA上でのリード作成が自動で行われ、インサイドセールスの担当割りまで行われるという仕組みを開発されました。
これまで手動で行われていた業務が自動化されたことで、ミスの発生が減り、約100時間/月の削減につながったようです。
参照:セールス部門の非効率な業務を続々自動化!RPA×Salesforceで年間1000時間以上の工数を削減 | Web Auto Robot の 「AUTORO(オートロ)」
みずほフィナンシャルグループ
株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社みずほ銀行、株式会社日立製作所の3社では、AIを活用して、みずほ銀行における業務効率化や生産性向上を目的とした取り組みを始めました。
PCの操作時間やお客様への訪問回数など、AIが各行員の行動データを分析。営業部門では、主要業績指標(KPI)と相関のある行動を特定することで、セールス力の向上に活用されています。
また、企画部門では業務上のボトルネックを特定し、業務効率化に向けた取り組みとしての活用を検討されているようです。
参照:みずほFG:【FinTech】人工知能の活用による営業部門のセールス力向上と企画部門の業務効率化に向けた実証実験を開始~〈みずほ〉の「オペレーショナルエクセレンス」実現に向けた取り組みを加速~
まとめ
AI技術は、営業現場の業務効率化や生産性向上の観点から活用が期待されているものです。単純作業が自動化されることで、商談のパフォーマンス向上や働き方改革の促進など、さまざまなメリットがあります。
とくに近年では人手不足の影響から、生産性向上に意識を向けられている経営者・営業マネージャーの方は多いのではないでしょうか。本記事を参考にして、営業現場でAI技術を取り入れるメリットや具体的な方法について理解を深めていただけたら幸いです。
また、商談管理に課題を感じられている企業様には「AI GIJIROKU」の導入がおすすめです。ZoomやGoogle Meetなどのビデオ会議ツールと連携をするだけで、自動で議事録の作成が可能です。音声認識精度は99.8%。発言内容を正確に聞き取り、情報共有をスムーズに進めることができます。
また、同サービスを提供する株式会社オルツでは、パーソナル人工知能を中心としたAI活用・LLM開発・DX推進を支援しています。さまざまな業種業界に特化した音声認識エンジンAPIをご提供しているため、貴社のアプリケーションやシステムとの連動にもご活用いただけます。少しでもご興味のある方は、下記のお問い合わせフォームよりご連絡ください。