生成AIをビジネスで活用する際、成果を大きく左右するのが「プロンプト」の作成です。生成AIが正確で実用的なアウトプットを提供するためには、明確で効果的な指示が欠かせません。
本記事では、プロンプトの基本的な考え方や作成のコツ、ビジネスシーンでそのまま使える実例を解説しています。思うような結果が得られず困っている方はぜひ参考にしてください。
生成AIのプロンプトとは

生成AIの「プロンプト」とは、AIに特定の指示を与えるためのテキスト入力のことを指します。「以下の文章を100文字以内で要約してください」や「週末の東京でおすすめの観光プランを教えてください」のような、ユーザーがAIに求めるタスクを伝えるための手段です。
プロンプトは、生成AIのアウトプットに直接影響を与える重要な役割を果たします。プロンプトの質が高ければ、生成される結果もより正確で役立つものとなります。一方で、曖昧で不明確なプロンプトでは、AIが誤解をしたり、意図に沿わない結果を出したりする可能性があります。
プロンプトは単なる指示文以上の役割を持ち、AIを効果的に活用するための基本的なスキルの一つです。プロンプトの内容次第で、アウトプットが使えるものにも使いにくいものにもなるため、その書き方には工夫を凝らすことが重要です。
プロンプト作成の基本的な3つの考え方

プロンプト作成の基本的な考え方を3つ解説します。
- 明確な指示を与える
- コンテキストを設定する
- 出力形式を指定する
明確な指示を与える
生成AIのプロンプト作成では、曖昧さを排除し、具体的で明確な指示を与えることが重要です。AIはユーザーが記載した情報を基に解釈を行うため、指示が曖昧だと解釈が広がりすぎ、意図しない出力が生成されることがあります。
たとえば、「猫の物語を作ってください。」という指示では、物語の内容や形式がAI任せになり、期待通りの結果を得るのは難しくなります。
一方で、「猫がクリスマスに子犬と出会う物語を300文字で作成してください。」と指示すると、 物語のテーマや登場キャラクター、場面、文字数を指定しているため、AIは明確な範囲で作業を行えます。
コンテキストを設定する
AIが正確かつ適切な出力を生成するには、指示だけでなく、コンテキスト(背景情報や文脈)を与えることが不可欠です。コンテキストが不足すると、AIはユーザーの意図を完全に理解できず、出力が不正確になる可能性があります。
例として「クリスマスについて説明してください。」という指示は、コンテキストが不十分であり、対象読者や目的が分からないため、一般的な情報が出力されます。
一方、「あなたは小学校の先生です。小学生に向けて、クリスマスの由来と現代の習慣について優しい言葉で説明してください。」のようにコンテキストとして役割や対象読者を指定すると、AIは文脈を理解しやすくなり、期待通りの出力を生成できます。
出力形式を指定する
AIが生成するコンテンツは、形式が統一されているほど実用性が高まります。ユーザーが希望する形式をプロンプト内で具体的に指示することで、目的に合った出力が得られます。
たとえば、「商品の特徴を教えてください。」という指示だと出力が長文化したり、内容が散漫になったりする可能性があります。そこで「商品の特徴を箇条書きで3つ挙げてください。」と出力形式を指定することで、必要な情報のみが簡潔にまとめられた出力が得られるのです。
出力形式を指定する方法としては、「箇条書き」「表」「文字数」などがあります。詳しい指定方法は後述する「効果的なプロンプトを作成する5つのコツ」にて解説します。
効果的なプロンプトを作成する5つのコツ

プロンプト作成の基本的な考え方を押さえたうえで、さらに意図に沿った出力につなげるために役立つコツを5つ解説します。
- 制約条件を設定する
- 役割を指定する
- 何をすべきかを強調する
- 指示を複数回に分ける
- 具体例を提示する
制約条件を設定する
AIに指示を出す際には、条件を細かく指定することで、回答の精度を高められます。制約条件は、場所や文字数、禁止事項などさまざまです。
例:
「300文字以内で説明してください。」
「日本の観光地で、温泉がある場所を教えてください。」
「レシピには卵を使用しないでください。」
役割を指定する
AIに特定の役割を与えると、その役割に応じた回答を得ることが可能です。役割を設定することで、AIはその分野に特化した知識や視点で回答を提供しやすくなります。
例:
「あなたは旅行プランナーです。次の条件で3日間の旅行プランを作成してください。」
「あなたは栄養士です。一般的にビタミンCが豊富に含まれている食材について教えてください。」
何をすべきかを強調する
プロンプトでは、「何をしないべきか」よりも「何をすべきか」を明確にする方が、AIは適切に指示を理解します。「余計な情報は含めないでください」のような否定的な指示は曖昧になりやすいため、具体的な行動を指定するのがポイントです。
例:
「プログラミング初心者に向けて、わかりやすい解説をしてください。」
「次の文章を要約し、重要なポイントを3つにまとめてください。」
指示を複数回に分ける
複雑なタスクを一度に指示するのではなく、ステップに分けることで、回答の精度を上げられます。一段階ずつ進めることで、結果を確認しながら修正や補足が可能になります。
例:
「まず、東京で人気の観光地を5つ挙げてください。」
「次に、それぞれの観光地の特徴を100文字以内で説明してください。」
「最後に、その観光地を訪れるおすすめの季節を教えてください。」
具体例を提示する
AIに具体例を示すことも、回答の質向上に効果的です。期待する出力の形式や内容を例として提供することで、AIがそのパターンに基づいて生成する可能性が高まります。ただし、具体例が多すぎると逆効果になる場合もあるため、必要最低限の例に留めましょう。
例:
「次のような形式で要約してください。
・ポイント1
・ポイント2
・ポイント3」
「以下のような短歌を作成してください。
・例1: 春風や / 花咲く丘に / 歩み寄る
・例2: 月明かり / 水面に映る / 夏の夜」
そのまま使える!生成AIのプロンプト例10選

生成AIのプロンプト例を10個ご紹介します。理想の出力結果を得るためのポイントやコピペでそのまま使えるプロンプト例も示していますので、ぜひ参考にしてください。
- メールの返信
- 文章の要約
- 特定のWebサイト・PDF資料の内容の要約
- 議事録の作成
- キャッチコピー・セールスコピーの作成
- 文章の翻訳
- 企画案のブレスト・幅出し
- 契約書のドラフト作成
- 画像・アイコンの作成
- Excel関数の作成
1.メールの返信
ビジネスシーンでは日々求められるメールの返信。生成AIの力を借りると、一から文面を作成するよりも効率よく業務を進められます。プロンプト作成のポイントは「誰に」「どんな目的で」「どのようなトーンで」を明確に伝えることです。必要に応じて語調や内容を調整しながら活用してください。
例1:感謝を伝えるメール
「次の内容をもとに、取引先への感謝のメールを作成してください。
相手:株式会社○○の鈴木様
内容:先日のミーティングへの参加に感謝し、いただいた提案について前向きに検討中である旨を伝える
トーン:ビジネスで適度に丁寧
長さ:200~300文字」
例2:アポイントメントの調整
「次の内容に基づいて、アポイントメント調整のメールを作成してください。
宛先:取引先の田中様
内容:来週火曜日から木曜日の間で、1時間の面談をお願いしたい。都合の良い時間帯を尋ねる。
トーン:丁寧で簡潔
長さ:100~200文字」
2:文章の要約
会議資料やレポート、ニュース記事などの簡潔な要約に活用できるプロンプトをご紹介します。文章の要約を指示する場合は、「要約の目的を明示する」「文字数を指定する」「重点を置く要素を指定する」の3点がポイントです。
生成AIによっては、音声ファイルやドキュメントファイルをそのまま添付する場合もあるため、適宜文面を調整して活用してください。
例:会議の議事録の要約
「次の内容を200文字以内で要約してください。
内容:以下の議事録を簡潔に要約する
要求:主な議題、決定事項、次回の予定を中心にまとめる
議事録:〜〜〜〜(ファイルの添付でもOK)」
3:特定のWebサイト・PDF資料の内容の要約
Webを活用したリサーチや資料確認時に便利なプロンプトです。精度の高い回答を得るためには、「資料の提供方法」「要約の目的」「焦点を当てたい部分」を明確にすることが重要です。
例1:Webサイトの要約
「以下のWebサイトの内容を100文字以内で要約してください。
必要な情報:主なトピックと結論
ページURL:https://〜〜〜 ページ内容:〜〜〜(URL参照できない場合に記載する)」
例2:PDF資料の要約
「以下のPDF資料を要約してください。
要約の目的:プレゼン用に簡潔な要点をまとめる
制限:300文字以内
資料内容:〜〜〜(ファイルを添付できない場合に記載する)」
4:議事録の作成
議事録の作成では、フォーマットや必要な項目を明示することで理想とする形に仕上がる可能性が高まります。ファイルを添付できない場合は、文字起こししたものを貼り付けることでも対応可能です。
例:会議の音声やメモを基にした議事録作成
「以下の会議内容を基に議事録を作成してください。
必要項目:会議日時、参加者、議題、主な発言内容、決定事項、次回の予定
フォーマット:箇条書き形式で記載 会議内容:〜〜〜(ファイルを添付できない場合に記載する)」
5:キャッチコピー・セールスコピーの作成
商品やサービスの魅力を効果的に伝えるキャッチコピーやセールスコピーを生成するプロンプト例です。ターゲットや目的を明確に伝えることで、説得力のあるコピーを引き出せます。
例1:商品の特徴を基にしたキャッチコピー
「以下の商品について、購買意欲をそそるキャッチコピーを考えてください。
ターゲット:20代女性
商品名:フルーツスムージー「〇〇」
特徴:100%無添加、ビタミンたっぷり、携帯に便利なパウチ型 使用場面:朝食代わりや仕事の合間の栄養補給」
例2:商品比較や競合との差別化を訴求するコピー
「以下のサービスの差別化ポイントを強調したキャッチコピーを作成してください。
サービス名:オンライン英会話「△△」
特徴:完全マンツーマン、24時間対応、業界最安値
ターゲット:忙しい社会人 競合との差別化:業界最安値でも高品質な講師陣」
6:文章の翻訳
多言語対応が必要な場合に役立つプロンプト例です。AIを使った翻訳では、目的や文脈を明確に伝えることで、より自然で正確な翻訳を得られます。
例:一般的な翻訳
「以下の文章を英語に翻訳してください。
文脈:ビジネスメール
トーン:丁寧でプロフェッショナル 文章:〜〜〜」
7:企画案のブレスト・幅出し
生成AIは、企画のアイデア出しや方向性の広げ方を考える際にも役立ちます。より実用的なアイデアを得るためのポイントは、具体的なテーマや条件を設定することです。
例1:イベントのアイデア出し
「地域コミュニティで開催するイベントの企画案を10個出してください。
目的:地元の活性化と交流促進
参加対象:全年齢層
必須要素:家族連れでも楽しめる内容を含むこと
提案形式:イベント名、概要、目玉アクティビティ」
例2:新しいキャンペーン案
「春限定のマーケティングキャンペーンの企画案を考えてください。
対象:20代~40代の都市部在住者
商品カテゴリー:飲料(コーヒー、紅茶など)
必須要素:SNSでの拡散を促す仕組みを取り入れること
提案形式:キャンペーン名、概要、具体的な仕組み」
8:契約書のドラフト作成
生成AIを活用すれば、契約書の初稿やベースとなるドラフトを効率よく作成可能です。契約の種類や内容、条件を具体的に指定することで、必要な要素を網羅した文章を作成できます。ただし、出力されるものはあくまで生成AIが作成したベースなので、最終的には専門家に確認してもらいましょう。
例:取引基本契約書のドラフト
「以下の条件に基づいて取引基本契約書のドラフトを作成してください。
契約の目的:ITサービスの提供に関する取引
契約当事者:甲(提供者)、乙(顧客)
主な内容:サービス内容の明記、納期、支払い条件(毎月末締め、翌月末払い)
特記事項:秘密保持条項を含むこと 提案形式:契約書の項目(目的、定義、契約期間、サービス内容、料金と支払い条件、秘密保持、その他条項)を含めてください。」
9:画像・アイコンの作成
デザイン業務やプレゼン資料のビジュアル補強に役立つプロンプト例をご紹介します。目的を明確にし、スタイルや色を指定すると希望に近い結果につながります。
例1:サイトのロゴアイコンを作成
「以下の条件に基づいて、シンプルでモダンなロゴアイコンのデザイン案を作成してください。
業種:テクノロジー企業(AI開発)
色:青と白を基調
スタイル:ミニマリスト
要素:抽象的な脳の形とデジタル回路の融合を表現する 提案形式:円形のアイコンとして仕上げてください。」
例2:商品パッケージのアイコン作成
「次の条件で、商品パッケージ用のアイコンを作成してください。
商品:オーガニックシャンプー
要素:自然を感じさせる葉と水滴のモチーフ
カラー:ナチュラルなグリーンとベージュ
スタイル:手描き風、ソフトで親しみやすい印象 サイズ:パッケージラベルに収まるシンプルなデザイン」
10:Excel関数の作成
Excelの関数を生成AIで作成する際は、タスクの目的や条件を明確に伝えることが重要です。範囲を指定したり、求める結果を伝えたりすると、より適切な関数を得られます。
例1:重複データの抽出
「Excelで以下の条件に基づいて重複データを抽出する方法を教えてください。
データ範囲:A2:A500 結果:重複している値をリストアップする」
例2:テキストを特定のフォーマットに変換する
「Excelで以下の条件に基づいてテキストをフォーマットする関数を教えてください。
入力:セルA2に電話番号(例:1234567890)が入力されている
結果:次の形式に変換する (123) 456-7890
使用関数:TEXT関数またはその組み合わせを使用」
まとめ
プロンプトの作成は、生成AIを活用するうえで欠かせないスキルです。ポイントを押さえた指示を与えることで、AIからより高品質なアウトプットを得られるようになります。基本を理解しつつ、実例を参考にしながら実践することで、業務効率や創造性をさらに高められるでしょう。
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