Develop Solutions

al+ GPT Solutions Blog

Back
3月 23, 2025

RAG(検索拡張生成)とは?生成AIの課題解決に役立つ注目の技術を解説

RAG_001

生成AIは、文章や画像などを生成する技術として注目されています。しかし、生成AIには学習済みデータに依存するという課題があります。この課題を克服し、より精度の高い回答を生成するための技術が「RAG」です。
 
本記事では、RAGの仕組みやメリット、注意点、活用方法について詳しく解説します。高精度な生成AIを導入したいと考えている担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

RAGとは

RAG_002

RAGは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、日本語では「検索拡張生成」と呼ばれる技術です。ユーザーが必要とする情報を検索して抽出し、その情報をもとに生成AIが正確な回答を生成することを目的としています。
RAGが必要な理由や仕組み、ファインチューニングとの違いから、RAGについて深堀りしていきます。


RAGが必要な理由

生成AIは高度な自然言語処理を可能にする一方で、いくつかの制約や課題を抱えています。その一つが、学習データの範囲に依存するという点です。生成AIは、学習時に与えられたデータを基盤にして回答を生成しますが、学習後に新たに登場した情報や元のデータに含まれていない内容については正確な回答を出せません。
 
また、学習データに曖昧さや誤りがあれば、そのまま回答に反映されてしまうこともあります。
 
こうした課題を解決するために、RAG(検索拡張生成)が必要とされています。RAGを活用することで、生成AIは情報の鮮度と正確性を保ちながら、より幅広いニーズに応えることができるようになるのです。


RAGの仕組み

RAGは、以下のようなステップで構成されています。

  1. ユーザーが質問を入力する
  2. 質問エンコーダでベクトル変換する
  3. リトリーバーによる文書検索が行われる
  4. ジェネレーターが回答を生成する

1. ユーザーが質問を入力する

まず、ユーザーが質問を入力します。この質問は自然言語で記述されており、たとえば「最新のAI技術について教えてください」といった形で入力されます。しかし、自然言語のままではデータベース内の情報と関連性を見つけることが難しい状態です。

2. 質問エンコーダでベクトル変換する

次に、入力された質問は「質問エンコーダ」と呼ばれる機能によってベクトル表現に変換されます。質問が数値化され、意味を含んだ数学的な形式に変えられることで、質問の内容とデータベース内の情報との類似性を計算できるようになります。

3.リトリーバーによる文書検索が行われる

続いて、リトリーバー(情報検索エンジン)が質問のベクトル表現とデータベース内の文書のベクトルを比較し、類似度が高い文書を検索します。このプロセスにより、ユーザーの質問に最も関連性が高い情報を特定できます。

4.ジェネレーターが回答を生成する

その後、ジェネレーター(生成AI)が検索された文書をもとに回答を生成します。ジェネレーターは、ユーザーの質問と関連文書の情報を統合し、自然な文章として回答を出力します。

RAGとファインチューニングとの違い

RAG(検索拡張生成)と生成AIのファインチューニングはどちらも生成AIを高度化する手法ですが、目的や方法には明確な違いがあります。
 
ファインチューニングは生成AIそのものに新しいデータを学習させるプロセスであり、特定の分野やタスクに対応するために生成AIモデルを再訓練します。ただし、モデルの再訓練は時間とコストがかかるのが課題です。また、一度ファインチューニングを行ったモデルは、その時点で学習させたデータに固定されるため、新しい情報を反映するには再度訓練が必要になります。
 
一方、RAGは外部のデータベースやドキュメントを参照し、必要な情報をリアルタイムで取り込む仕組みであるため、生成AIに新たな学習を施す必要がありません。RAGでは、質問に応じてデータベースから最適な情報を検索し、その情報をもとに生成AIが回答を生成します。このため、最新の情報や動的に変化するデータにも柔軟に対応できるのが大きな利点です。
 
どちらを選ぶべきかは、利用目的や必要な情報の鮮度、コストや導入の容易さなどの要件に応じて判断する必要があります。

RAGを使うメリット

RAG_003

RAGには次のようなメリットがあります。

  • 生成AIが出す回答の精度を向上できる
  • 幅広い情報を扱える

生成AIが出す回答の精度を向上できる

RAGは、生成AIが正確で信頼性の高い回答を提供するために必要な情報を検索エンジンから取得します。そのため、生成AIが過去の学習データに基づく曖昧な回答を出すリスクが低下します。

幅広い情報を扱える

生成AIは、通常学習データの範囲に制限されており、その範囲を超えた情報にはアクセスできません。しかし、RAGを使用すると、インターネットに公開されていない社内専用の非公開データや最新の研究論文、報告書など、幅広い情報を活用できます。

RAGを使ううえでの注意点

RAG_004

RAGは生成AIの活用の幅を増やす便利な技術ですが、一方でいくつかの注意点も存在します。

  • 回答するまでの時間が長くなる
  • 情報が正確であるとは限らない
  • 回答するまでの時間が長くなる

RAGは、従来の生成AIに比べて回答が生成されるまでの時間が長くなる場合があります。特に、以下の状況では処理時間が増加する可能性があります。
 
複雑な質問を受けた場合:多くの関連文書を検索し、精査する必要があるため、処理に時間がかかる
大規模なデータベースを使用する場合:検索エンジンが膨大なデータセットから適切な情報を見つけるのに時間がかかることがある
 
ユーザー体験を最適化するためには、検索エンジンの性能を高める工夫や事前に検索対象を絞り込むなどの対策が重要です。

情報が正確であるとは限らない

RAGの回答精度は、検索対象となるデータベースの質に大きく依存します。そのため、以下のリスクが考えられます。
 
不正確な情報の取り込み:データベースに誤った情報や偏った内容が含まれている場合、RAGが生成する回答にもその影響が及ぶ
古い情報の参照:データベースが最新の情報に更新されていない場合、古い情報を基にした回答が生成される可能性がある
 
リスクを軽減するためには、データベースの定期的なメンテナンスと品質管理が不可欠です。

RAGを活用できる分野

RAG_005
FAQ Enquiry Questions Guide Customer Support Concept

RAGは生成AIの可能性をさらに広げ、多くの業界や用途で活用が期待されています。以下では、具体的な活用分野について詳しく解説します。

  • カスタマーサポート
  • 社内チャットボット
  • コンテンツ作成

カスタマーサポート

RAGは、カスタマーサポート分野で高い効果を発揮します。たとえば、顧客が抱える問題に対して、最新の製品情報やサポートドキュメントを基にした的確な回答を提供可能です。
 
また、24時間365日対応できるため、人間のオペレーターがいない時間帯でもサービスを継続して提供でき、顧客満足度の向上につながります。


社内チャットボット

社内業務の効率化にも、RAGは大きな役割を果たします。たとえば、社内規定や手続きのフローなど社員が必要とする情報を、社内データベースから即座に検索し提供します。
 
また、従業員が日常業務で生じる疑問を解決するためのツールとして活用し、時間の無駄を削減することも可能です。

コンテンツ作成

膨大な情報を扱うコンテンツ作成の分野でも、RAGは活用できます。例として、研究論文や報告書、ニュース記事などの長文データを要約し、簡潔で分かりやすい形に整えることが可能です。


RAGの作り方

RAG_006

RAGを構築するためには、以下のステップを順に進める必要があります。
 
必要な技術やツールの選定
データの準備
検索エンジンのセットアップ
LLMと検索エンジンの統合
RAGシステムの評価・改善
実運用・セットアップ
 
まず、RAGを構築するために必要なツールや技術を選定します。次に、RAGが参照するためのデータを収集し、適切な形式で準備します。ここでは、データ収集やデータの処理、フォーマットの統一などが必要です。
 
データの準備ができたら、検索エンジンを構築し、準備したデータをインデックス化します。その後、検索エンジンで取得したデータを生成AIが活用できるように統合します。この段階では、質問エンコーダの実装やジェネレーターの設定などが必要です。
 
LLMと検索エンジンの統合後はシステムが意図した通りに動作しているかを評価し、改善を行います。そして最終的に、RAGシステムを運用環境に展開します。


RAGの企業活用事例

RAG_007


企業ではRAGをどのように活用しているのか、ここでは事例を3つご紹介します。

  • LINEヤフー株式会社
  • デロイトトーマツコンサルティング合同会社
  • 株式会社セブンテクノロジー


LINEヤフー株式会社:社内向け生成AIツールを全従業員に導入

LINEヤフー株式会社では、RAG技術を活用した独自の業務効率化ツール「SeekAI」を全従業員に導入しています。SeekAIは社内のワークスペースツールや社内データを参照元とし、従業員が入力した質問に対する回答を表示するツールです。
 
活用が想定される場面としては、新入社員向けの資料やマニュアルの作成、会議議事録からの内容把握、業務ツールの問い合わせ先参照などが挙げられています。
 
LINEヤフーでは、SeekAIによる業務効率化を推進し、業務改善として年間70~80万時間の削減を目指しているとのことです。
 
参照:LINEヤフー、RAG技術を活用した独自業務効率化ツール「SeekAI」を全従業員に本格導入。膨大な社内文書データベースから部門ごとに最適な回答を表示し、確認・問い合わせ時間を大幅に削減|LINEヤフー株式会社


デロイトトーマツコンサルティング合同会社:多機能RAGアプリを開発

デロイトトーマツコンサルティング合同会社では、独自のデータを生成AIを通じて利活用するために、多機能RAGアプリケーションを開発しました。
 
多機能RAGアプリケーションには、多くの機能が備わっています。たとえば、検索精度向上のための機能として「サブクエリ検索」「2段階検索」、回答精度向上のための機能として「回答キャッシュ」「FAQ回答」などがあります。
 
デロイトトーマツコンサルティング合同会社は多機能RAGアプリケーションの他にも、マルチエージェントやAIアバター、特化型LLMなどに日々取り組んでおり、クライアントのDXの加速化を支援しているとのことです。
 
参照:デロイト トーマツ、LLMに企業独自データを組み込む技術ノウハウを集約した「多機能RAGアプリ」を開発|デロイトトーマツコンサルティング合同会社


株式会社セブンテクノロジー:サポートエンジニアの業務負担を軽減

株式会社セブンテクノロジーでは、サポートエンジニアの業務負担を軽減するためにRAGを活用しています。サポートエンジニアはユーザーからの問い合わせに対してマニュアルやFAQ、過去の問い合わせ履歴を参照して回答を作成しており、スキル育成や負担軽減に課題を感じていました。
 
RAGを活用したシステムを活用したところ、サポートエンジニアの回答作成時間は最大30%もの短縮に成功。サポートセンター全体でも約10%もの業務効率化ができ、サポートエンジニアの半数以上から回答作成時の心理的負担が軽減したとの意見が得られたそうです。
 
参考:セゾンテクノロジー様の AWS 生成 AI 事例:Amazon Bedrock を活用してサポートエンジニアの回答作成時間を最大 30 % 短縮|Amazon Web Services ブログ


RAGを用いたサービス例

RAG_008

自社でのRAG構築は技術的にハードルが高いため、知見のある企業やサービスを活用することがおすすめです。ここでは、RAG構築を提供しているサービスを3つご紹介します。

  • TASUKI Annotation RAGデータ作成ツール
  • imprai
  • Panorama AI Box


TASUKI Annotation RAGデータ作成ツール(ソフトバンク株式会社)

ソフトバンク株式会社が提供する「TASUKI Annotation RAGデータ作成ツール」は、精度の高いRAG回答生成を簡単に作成できるツールです。エンジニアでなくても直感的に活用できるインターフェースなため、幅広い組織で活用できます。プランは3つあるため、利用したいユーザー数やデータの容量などから最適なものを選べます。

imprai(HOUSEI株式会社)


HOUSEI株式会社が提供する「impri」は、高度なRAGを簡単に構築できる生成AIローコード開発プラットフォームです。議事録作成や契約書チェック、翻訳サービスなど、すぐに使えるアシスタントを100種類以上備えているため、さまざまな場面で活用できます。無料トライアルが用意されているため、実際にツールに触れてから導入を検討することが可能です。


Panorama AI Box(SDT株式会社)

SDT株式会社が提供する「Panorama AI Box」は、最新のオープンLLMで高い日本語性能を持つGoogle GemmaやELYZAなどを採用したツールです。ダウンロードしてインターネット接続ができないオンプレミスの環境でも生成AIを活用できるため、工場や病院など高いセキュリティが要求される場所や通信制限のある場所でも導入しやすいのが特徴です。


まとめ


RAG(検索拡張生成)は、生成AIの弱点を補完する技術として注目されています。RAGを活用することで、生成AIの回答精度を向上させ、幅広い情報に基づく信頼性の高い回答を提供可能です。特に、カスタマーサポートやコンテンツ作成などの分野での活用が期待されています。
 
ただし、RAGの導入にはデータ準備やシステム設計が必要であり、回答時間の延長やデータ精度の課題にも注意が必要です。自社でのRAG構築は技術的にハードルが高いため、知見のある企業やサービスを活用することをおすすめします。
 
株式会社オルツでは、パーソナル人工知能を中心としたAI活用・LLM開発・DX推進をご支援しています。ヒアリングから運用まで一貫してサポートしていますので、生成AIにあまり詳しくないという場合でもご安心ください。RAGを活用した生成AIの導入にご興味がありましたら、下記のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
 
>>株式会社オルツへのお問い合わせはこちらから

関連記事

COMPANY

LOCATION

HEAD OFFICE

〒106−0032
東京都港区六本木7−15−7 新六本木ビル 402

Service

  • AI GIJIROKU
  • nulltitude
  • EMETH
  • AI通訳 Beta