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業界別 11月 7, 2024

建設業界におけるDXとは?現場の課題や推進事例、注意点などを解説

建設業界は、社会のインフラを支える基幹産業でありながら、昨今では深刻な人手不足や低い労働生産性、働き方改革の遅れなど、さまざまな問題が指摘されています。これらの問題を解決し、持続可能な成長を実現するためには、デジタル技術を活用したDX(デジタル・トランスフォーメーション)の取り組みが不可欠です。しかし、DXを推進するにはIT技術に関する知見が求められるほか、プロジェクトマネジメントとして注意するべきポイントがいくつか存在します。

本記事では、建設業界におけるDXの取り組みについて、具体的な事例や推進時のポイントを解説します。建設業界に従事する経営者・管理職の方はぜひ参考にしてください。

建設業界におけるDXとは

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建設業界では古くから続くアナログな業務が多いため、デジタル技術を活用した改革の余地が大きいと言われています。具体的には、図面資料が紙媒体で管理されていたり、資材発注や契約締結がFAXで行われていることなどが挙げられます。とくに昨今では、建設需要の増加と人手不足が相まり、多くの建設現場では業務効率化の推進が声高に求められているようです。

従来までは「i-Construction」という形で、国土交通省が中心となって建設現場の生産性向上に向けた取り組みが行われていましたが、近年ではよりデジタル技術に焦点を当てたDX(デジタル・トランスフォーメーション)に注目が集められています。しかし、建設業界におけるDXの取り組みは未だ十分に浸透していないのが実情です。実際に総務省の調査によれば、建設業界のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の取組状況で「実施してない」と回答した企業は79.4%と、全体平均の77.1%よりもやや高い結果となっています。また「2018年度以前から実施している」と回答した企業は13.5%と、全体平均の13.5%に比べてやや低く、他の業界よりもDXの取り組みが遅れていることがわかります。

一方でこのような状況だからこそ、DXにいち早く取り組むことができれば、他の企業に比べて優位なポジションを築くことができます。また、業務効率が改善されればスケジュール通りに建設作業を進められるほか、完了までにかかる費用を削減できるため利益率の改善にもつながります。今後は人手不足の流れがさらに深刻化することが予想されるため、DXはほぼ全ての企業で欠かせない取り組みであるといえるでしょう。

 

建設業界が抱える課題

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建設業界に属する多くの企業では、下記のような課題と直面しています。

  • 深刻な人手不足
  • 低い労働生産性
  • 働き方改革の遅れ

深刻な人手不足

日本国内では少子高齢化が進み、各業界では深刻な人手不足に悩まされています。パーソル総合研究所の発表した「労働市場の未来推計 2030」によれば、2030年には7,073万人の労働需要に対して、6,429万人の労働供給しか見込めず、約644万人の人手不足が発生することが予想されています。

建設業界も例外ではなく、熟練工の引退に伴い、人手不足の問題は年々深刻な話題となっています。また「怪我のリスク」「長時間労働」「体育会気質」などのイメージから、若い世代の職業選択肢から敬遠されつつあることも懸念事項として挙げられます。

実際に国土交通省の調査によれば、建設業界の就業者数はピーク時の685万人(平成9年)から492万人(令和2年)に減少しているようです。また、帝国データバンクの調査によれば建設業界の人手不足(正社員)の割合は全業界で2番目に高いようです。一方で、同省が発表した「令和4年度(2022年度) 建設投資見通し」によると、建設需要は2015年から右肩上がりとなっています。

今後は大阪万博やリニア新幹線などの大規模プロジェクトが控えているほか、老朽化対策や災害対策などの需要も引き続き生まれることが予想されています。そのため、人手不足の影響はより一層深刻になることが見込まれるため、業界全体での対策が必要になるでしょう。

低い労働生産性

建設業界では、低い労働生産性が問題視されています。実際に国土交通省の調査によれば、建設業の「就業者・時間あたりの付加価値労働生産性」は全産業平均の約6割と低い水準であることがわかります。

昔から依然としてアナログな作業が多く、業務の効率化が進んでいないことが原因のひとつとして挙げられます。また、人手不足と需要急増の二重苦から、目先の業務に追われてしまうところもあるでしょう。いずれにせよ少子高齢化が進む現代では、労働生産性の向上は避けては通れない課題であるといえます。

 

働き方改革の遅れ

2024年4月には、他の業界と比べて5年遅れで「働き方改革関連法」が適用されましたが、慢性的な人手不足から現場レベルでは対応できていないケースもあるのではないでしょうか。このような働き方改革の遅れから、長時間労働や過酷な労働環境が改善されていないことも課題として挙げられます。

実際に国土交通省によれば、他の産業ではすでに当たり前となっている「週休2日」の整備が建設業界では未だ進んでいないほか、下位の下請になるほど社会保険の加入率が低く、踏み込んだ対策が必要になることなどが述べられています。

働き方改革の遅れは、労働者の健康や就労モチベーションの低下につながります。また、近年ではワークライフバランスを求める求職者も多く、新規採用者を増やすためには職場環境の整備が欠かせません。働き方の改善は一朝一夕には実現できないため、DXを通じた中長期的な取り組みが求められます。

建設業界のDX事例

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先述した課題を解決するために、建設業界ではさまざまなDXの取り組みが行われています。

  • AIの活用
  • ドローン技術の活用
  • SaaS(クラウドサービス)の活用
  • BIM/CIMの活用

AIの活用

近年発展を遂げているAI技術は、建設業界でも活用のシーンがあります。具体的には、設計図の自動作成や施工シミュレーション、品質管理などで使用されています。

実際に、大成建設株式会社では「AI設計部長®」という設計ツールを開発しました。本ツールは、顧客の希望条件をもとに最適な設計案を短時間で提供できるものです。また、敷地条件から建築基準を踏まえて、建築可能範囲を自動算出することも可能です。BIMデータとして出力可能なため、設計段階への移行もスムーズに行えます。

参考:「AI設計部長®」の新たな設計ツールを開発 | 大成建設株式会社

 

ドローン技術の活用

測量や点検、現場の状況把握などの場面では、ドローン技術の活用が進んでいます。とくに転落の危険性がある場所では、ドローン技術を活用することで安全に行うことができます。また、足場やクレーンなどの準備が不要になるため、作業時間の短縮や人手不足の解消にもつながります。

実際に、清水建設株式会社では「ELIOS 3」という屋内点検用球体ドローンを導入しました。同社では、これまで検査工程や点検作業などの場面で、酸素欠乏症の危険を伴う地下ピット内や、足場を使用しないと点検できない高所などに足を運ぶ必要がありました。しかし、ドローン技術を活用することで、目視点検と同等レベルの成果を実現。これらの危険性を排除したうえで、作業日数の削減が可能となりました。

参考:清水建設、屋内点検用球体ドローン「ELIOS 3」を導入 | ブルーイノベーション株式会社のプレスリリース

 

SaaS(クラウドサービス)の活用

建設現場の施工管理では、従来まで紙やエクセルでの管理が一般的でした。しかし、この管理方法ではデータの紛失があったり、共有に遅延があったりなど、さまざまな問題があります。データの一元管理ができる「SaaS(クラウドサービス)」を活用すれば、これらの問題を解消し、さらに業務を効率化することができます。

実際に、株式会社宇佐美組ではSaaSを導入。情報共有として「黒板機能」を使ったり、指摘箇所をまとめられる「図面機能」を使ったりなど、一部の機能から順次デジタル化を進めているようです。

参考:ANDPAD導入事例 | 株式会社宇佐美組

BIM/CIMの活用

建設業界では、近年「BIM」や「CIM」の活用が進んでいます。いずれも3次元モデルで情報共有を行いながら建設作業を進める方法のことです。3次元モデルといえば「3D CAD」も存在しますが、BIM/CIMでは属性情報(部材や部品の情報)を付与できるため、より高い精度の設計図を作成することができます。

実際に、国土交通省はデータの活用・共有による受発注者の生産性向上を目的として、令和5年からBIM/CIMの原則適用を発表しました。これにより、さまざまな情報を統合して、建設作業における全過程の情報共有が容易になることが予想されています。

 

建設業界でDXを推進する流れ

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建設業界でDXを推進する際には、下記のステップで進めていきます。

  1. 課題と目的を明確にする
  2. 目的にあった解決策を検討する
  3. 実行リソースを確保する
  4. プロジェクトを実行する
  5. 実行後に振り返りを行う

課題と目的を明確にする

まずは自社の抱える課題を具体的に洗い出します。この際のポイントは、関係者の間で課題を洗い出し切ることです。後工程で議論が振り出しに戻らないように、徹底的な議論を重ねることが重要です。また、いくつか挙げられた課題のなかで「どの課題を解決したいのか(=DXの目的)」を明確にする必要もあります。目的が不明確なままでは、課題の優先度をつけられず、後述する解決策の検討ができないため注意が必要です。

目的にあった解決策を検討する

目的が決まったら、それに沿った解決策を検討します。DXの取り組みだからといって、必ずしもデジタル技術の導入で解決する必要はありません。思考を狭めず、解決策は広く検討してみましょう。また、デジタル技術であれば先述したようなAI・ドローン・SaaSの活用が一般的です。デジタル技術の導入には、高度な知識が求められるため、専門の支援会社に依頼をするのがおすすめです。

実行リソースを確保する

解決策が決まったら、プロジェクトの実行に必要なリソースの確保を進めます。具体的には「人材」と「予算」を抑える必要があります。また、リソースはプロジェクトの完了期日から逆算をして決めます。そのため、不足する場合には社内で調整をしたり、外部から調達をしたりする必要が出てくるでしょう。そしてリソースを確保できたら、プロジェクトの実行計画を立てて関係者に共有を行います。

プロジェクトを実行する

プロジェクトの実行計画に基づいて、実際にDXの取り組みを進めていきます。実行する際には、関係者との連携を密に行い円滑に進めることが重要です。また、デジタル技術を導入する場合には、実際に利用する現場メンバーに対してマニュアルや研修を行うなど、定着に向けた取り組みを行います。

実行後に振り返りを行う

プロジェクトの実行後は、定期的に成果を評価して改善点があれば修正を図ります。このような振り返りは、事前にスケジュールを決めておかないと形骸化してしまうため、プロジェクトの開始段階から「いつ・どのように振り返りを行うのか」を決めておくのがおすすめです。また、見つかった課題は次のプロジェクトにも活かせるため、できるだけ社内で共有をしておきましょう。

建設業界でDXを推進する際の注意点

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DXを成功させるためには、いくつかの注意点があります。

  • 手段を目的化しない
  • マネジメント層を中心に動く
  • 社員のITリテラシーを高める

手段を目的化しない

DXはあくまで手段であり、目的ではありません。とくに新しいシステムやツールを導入する際には注意が必要です。導入すること自体が目的となり、導入後のフォローアップや定期的な振り返りが疎かになってしまうケースがあります。また、デジタル技術を導入することで、かえって現場が混乱してしまうのは本末転倒です。定期的に「当初の目的に沿っているか」「沿っていない場合はどこを改善すればよいのか」を確認し、課題解決や業務効率化に向けて取り組むことが重要です。

マネジメント層を中心に動く

DXの取り組みは、マネジメント層の理解と協力が欠かせません。会社全体がDXの重要性を認識し、積極的に推進していくことが重要です。多くの企業では、中長期的な取り組みよりも目先のトップラインを重視したプロジェクトにリソースが割かれてしまいます。DXは比較的中長期な取り組みになるため、なかなかリソースを確保することが難しい場合があるでしょう。そのため、プロジェクトマネージャーになる人はマネジメント層をステークホルダーに加えて、社内の最優先事項として進めていくことが求められます。

 

社員のITリテラシーを高める

デジタル技術を活用するためには、社員のITリテラシーの向上が求められます。研修や教育プログラムを実施し、社員が新しい技術をスムーズに習得できるような体制を整えましょう。IT技術に関する基礎知識から簡易なプログラミングスキル、データ分析に関するスキルまで、広く浅く網羅的な学習を行うことで、リテラシーの底上げが期待できます。また、新しいシステムやツールを導入する際には、マニュアルの手配やフォローアップ窓口の設置が必要です。とくに高齢の社員が多い組織では、簡単なデジタル技術でも敬遠されてしまう可能性があるため、手厚いフォローを心がけましょう。

まとめ

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建設業界では「深刻な人手不足」「低い労働生産性」「働き方改革の遅れ」など、さまざまな課題が存在しています。とくに人手不足の影響は今後さらに広がることが予想されており、業界全体で早い段階でのアプローチが必要であることが指摘されています。

なかでもデジタル技術を活用した「DX」は、これらの課題を解決し、企業の競争力を強化することが期待されています。とくにAI・ドローン・SaaSなどのデジタル技術は、設計から施工、点検までの各工程を効率化し、建設にかかる時間や人的リソースを最小限に抑えることができます。

しかし、DXを成功させるためには課題と目的を明確にしたうえで、適切な解決策を講じることが重要です。また、プロジェクトを進めていくにはIT技術に関する深い知見が求められます。社内で対応できない場合には、専門の支援会社に依頼をするのがおすすめです。

株式会社オルツでは、パーソナル人工知能を中心としたAI活用やDX推進を支援しています。課題のヒアリングからコンサルティング、実証実験まで一気通貫で行うほか、実際の開発や運用などの技術的な支援も可能です。少しでもご興味のある方は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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