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業界別 November 12, 2024

アパレルにおけるDXとは?事例や推進時の流れ、注意点を解説

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アパレル業界は人手不足や消費者ニーズの多様化から、さまざまな課題が指摘されています。一方で、デジタル技術の活用が未だ進んでいない企業も多く、DX(デジタル・トランスフォーメーション)による改革余地の大きさが期待されています。とくに顧客と直接接点を持つ店舗やECサイトにおいて、デジタル技術の活用を模索する企業が増えています。実際に、矢野経済研究所の調査によると「DXによるファッション業界の活性化への影響」は「販売・販売促進」の分野で最も大きく、36.8%の企業が最も影響を与える分野として回答しているようです。

しかし、DXを推進する場合はIT技術に関する高い専門性が求められます。また、現場への定着を図るためには慎重なプロジェクトマネジメントが必要です。本記事では、アパレル業界におけるDXの取り組みについて、具体的な事例や推進時のポイントを解説します。アパレル業界に従事する経営者・管理職の方はぜひ参考にしてください。

アパレル業界におけるDXとは

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そもそもDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、デジタル技術の活用を通じて、業務プロセスやビジネスモデルを変革し、新たな価値を生み出す取り組みのことを指します。アパレル業界では消費者ニーズの多様化や人手不足などの影響から、近年ではさまざまな問題に直面しています。このような状況のなかで、DXの取り組みは各社にとってもはや欠かせない活動であるといえます。

具体的には、従来までのアナログな業務プロセスをデジタル化したり、AIやIoTなどの技術を活用して顧客の購買体験を向上させたりといった活動が挙げられます。このような取り組みを通じて、販売促進や業務効率化、引いては働き方改革の改善などの効果が見込まれるため、近年では成長戦略のひとつとしてDXを掲げる企業が増えています。

アパレル業界が抱える課題

アパレルDX_02

アパレル業界がDXを推進する背景には、下記のような課題が存在します。

  • 人手不足の深刻化
  • 業務の属人化
  • 消費者ニーズの多様化

人手不足の深刻化

少子高齢化や労働人口の減少に伴い、日本国内では各企業で人手不足が叫ばれています。実際にWWDJAPANの調査によれば、アパレル企業で人手不足を感じている企業は約8割に及ぶようです。これは店舗での接客や商品のMD(陳列)など、人手に頼りがちな業務が多いことが原因のひとつと考えられます。

また、アパレル業界を含む小売企業では若手スタッフの離職率が高く、厚生労働省の調査によると新規大卒就職者の3年以内離職率は36.1%(平成31年3月卒)と、全業界平均の31.5%を超える結果となりました。若手スタッフの離職は、人手不足の状況が続く原因となります。また、既存スタッフの業務負担が減らないため、働き方改革が進まず、さらに離職者が増えてしまう可能性もあるでしょう。とくに若者向けのファッションを取り扱う企業では、一定数の若手スタッフが現場や商品企画の部門で必要になるはずです。常に次の世代の新規スタッフを増やすことが求められるため、魅力ある職場環境を作り上げる必要があります。

業務の属人化

アパレル業界では、長年培われた経験や勘に基づいた業務が多く、個人の感覚に依存している業務が多いのが現状です。とくに店舗では接客という業務の特性から、スキルやナレッジが属人化しやすい傾向にあります。このため、人材の育成に時間がかかり、業務の効率化や標準化が難しいといった課題があります。

消費者ニーズの多様化

近年では、ソーシャルメディアの発展に伴い、消費者は多様な情報に触れるようになりました。その結果、従来よりも個性や価値観に基づいた商品を求める傾向が強まっています。そのため、今までのような一括りの商品企画では、多様化したニーズに対応することが難しく、顧客満足度の低下につながる可能性があります。

また、近年では地球温暖化の影響から、販売シーズンの考え方を改める企業も出てきてました。実際に株式会社三陽商会では「四季」を「五季」に改めて、夏物の販売時期を従来までの3ヶ月間から5ヶ月間に拡大をします。このように、アパレル業界ではトレンドが日々大きく変化するため、各企業では消費者ニーズの把握や商品開発、販売店への展開などに悪戦苦闘しているのが実情です。

参考:三陽商会「真夏も服を売りたい!」大変貌した理由 夏の長期化に暖冬も、アパレル業界の深刻問題 | 専門店・ブランド・消費財 | 東洋経済オンライン

アパレル業界のDX事例

アパレルDX_03

これらの課題を解決するため、アパレル業界では下記のようなさまざまな取り組みが行われています。

  • デジタル採寸の導入
  • キャッシュレス決済の導入
  • 在庫管理の効率化
  • オンラインストアの開始
  • 店舗のデジタル活用

デジタル採寸の導入

従来までの体格測定に代わって、3Dスキャナーなどを活用したデジタル採寸を導入することで、より正確なサイズ測定が可能になります。ECサイトではスマートフォンのカメラを使うことで、服を着たまま背丈・脚の長さ・首周り・肩幅までサイズを測定することができます。顧客にぴったりの商品を提案できるようになり、返品率の低下や顧客満足度の向上、スタッフの業務負担の削減にもつながります。

実際に大手アパレルECサイトのZOZOTOWNでは「マルチサイズプラットフォーム(MSP)」を導入。ユーザーが身長と体重を入力するだけで、自分の体型にあった商品がレコメンドされるようになりました。また、女性向け下着メーカーのワコールでは「3D smart & try」という計測サービスを開始。本サービスでは、3Dボディスキャナーを用いて全身18ヶ所の採寸をわずか3秒で測ることができます。2019年5月から始まったサービスですが、2023年12月には計測人数が累計21万人を超えたようです。

このように、デジタル採寸の導入は各社アパレルメーカーや小売店で進んでおり、今後も多くのユーザーに浸透していく技術であることが予想されます。

参考:株式会社ZOZO、ZOZOSUITで得た体型データを活用して出店ブランドが企画する商品を多サイズ展開し、ZOZOTOWN上で販売する「MSP事業」を今秋より開始予定 - 株式会社ZOZO

参考:サービス開始から5年で計測者人数21万人を達成。なぜワコールの3D計測サービスが下着の領域を超えたサービスを展開するのか。|株式会社ワコールのストーリー|PR TIMES STORY

キャッシュレス決済の導入

クレジットカードや電子マネーなど、キャッシュレス決済の導入は、顧客の利便性向上だけでなく、レジ業務の効率化にもつながります。とくに決済データの分析は、顧客の購買行動を把握し、マーケティング活動に応用することも可能です。また、キャッシュレス専用のセルフレジを導入することで、レジの業務自体をなくすこともできます。このように、キャッシュレス決済の導入は顧客と従業員それぞれに大きなメリットをもたらします。

 

在庫管理の効率化

RFIDタグやIoTセンサーなどを活用することで、リアルタイムで在庫状況を把握し、最適な発注を行うことができます。これにより、過剰在庫や欠品といった問題を解消し、安定的な商品提供の実現や物流コストの削減が期待できます。

実際に株式会社ラピーヌでは、RFIDを導入することで、四半期に一度実施していた棚卸し作業にかける時間を5分の1に削減できたようです。また、以前までは在庫を素手で触ってバーコードを読み込む必要がありましたが、RFIDを導入したことで、誤って傷をつけたり、汚したりするリスクをなくすことができたようです。

参考:RFID導入でアパレル店舗の棚卸時間を5分の1に削減 − 小売|導入事例|RFID Room

 

オンラインストアの開始

ECサイトの開設により、時間や場所にとらわれずに商品を販売できるようになります。また、オンラインストアでは、店舗では取り扱えない商品や豊富なサイズ展開が可能となり、顧客の購入選択肢を広げることができます。最近では、プログラミングなどの高度な知識を使わずにノーコードでECサイトを構築できるツールも登場しています。サードパーティーのアプリを導入すれば、アドオン機能の実装も簡単にできるため、オンラインストアの開設は一昔前に比べると敷居が低くなっています。

店舗のデジタル活用

デジタルサイネージやAR/VR技術を活用することで、店舗での購買体験を向上させることができます。たとえばデジタルサイネージで新商品を紹介したり、ARで試着体験を提供したりすることで、顧客の購買意欲を高めることができます。また、公式アプリを通じて来店時にプッシュ通知を送ることで、顧客一人ひとりにあった商品のレコメンドも可能です。

これらの施策以外にも、近年ではAIやIoTを活用した「スマートストア」の取り組みに注目が集まっています。RFIDを使って商品情報を読み取り、スマートカートによるセルフレジを実現した完全無人の店舗が実現する未来もそう遠くはありません。Amazon Goが先駆けとなったこの業態は、他の小売企業でも実証実験が行われつつあります。

このように、店舗のデジタル活用は顧客満足度の向上のみならず、業務効率化の実現や人件費の削減などにもつながります。

アパレル業界でDXを推進する流れ

アパレルDX_05

アパレル業界でDXを推進する際には、下記のステップで進めます。

  • 課題や目的を明確にする
  • 解決策を検討する
  • リソースを確保する
  • プロジェクトを実行する
  • 実行後に振り返る

課題や目的を明確にする

まずは自社の現状を把握し、業務上の課題を特定します。この際に重要なのはさまざな部署・役職のメンバーからヒアリングを行うことです。とある人から見たら些細な問題でも、他の人から見たら深刻な問題だったというケースもあります。また、さまざまな意見を俯瞰して見ることで、全社ベースの課題が浮き彫りになる可能性もあります。このようにして、全社の抱える課題をいくつか挙げられたら、なかでも注力するべき課題(=DXの目的)を設定しましょう。

解決策を検討する

目的が決まったら、次に解決策を検討します。この際に注意が必要なのは、デジタルで解決することを目的にしないことです。DXはあくまで手段に過ぎません。デジタル技術を導入せず、且つ予算や工数をかけずに解決できることであれば、他の手段を使って解決しても構わないのです。

ただし、多くの場合はデジタル技術の導入が求められます。導入を進めるには高度なIT知識が必要になるため、専門の支援会社に依頼をするのがおすすめです。また、可能であれば解決策を検討する段階から協力を仰ぎましょう。そうすることで、自社では思いつかなかった方法や新たな着眼点を得られる可能性があります。

リソースを確保する

解決策が決まったら、予算や人材などのリソースを確保する必要があります。プロジェクトの期日から逆算して、必要があれば外部リソースを活用することも視野に入れます。リソースが確保できたら、具体的に「いつまでに・誰に・何を依頼するのか」を明確にしたうえで、関係者間でプロジェクト計画書を共有します。

プロジェクトを実行する

プロジェクト計画書に沿って、実際にDXを推進していきます。実行する際には関係者との連携が重要です。コミュニケーションを綿密に取り、トラブルの発生防止やスケジュール通りのタスク進行を目指します。また、新しいシステムやツールを導入する際には、利用するメンバーが混乱しないようにマニュアルや研修の手配が必要です。困ったことがあればすぐに相談ができるようなサポート窓口の設置も進めていきましょう。

実行後に振り返る

プロジェクトの実行後には、定期的に振り返りを行います。「当初定めた目的を達成できているか」「できていない場合は何を改善する必要があるのか」を議論し、次に向けた動きを検討します。振り返りのスケジュールは必ず事前に定めるのがおすすめです。「いつ・どのような振り返りを行うのか」を決めておくことで、プロジェクトの形骸化を防ぐことができます。また、プロジェクトを通して得られた知見は他の分野でも活用できるため、可能な限り社内に残しておきましょう。

アパレル業界でDXを推進する際の注意点

アパレルDX_04

DXを成功させるためには、下記3つのポイントに注意する必要があります。

  • 優先順位をつけて取り組む
  • 現場スタッフの理解を得る
  • 社員のITリテラシーを高める

優先順位をつけて取り組む

とくにアナログな業務が多い企業では、DXの施策アイデアは数多く出てくるはずです。しかし、予算や人数などのリソースが限られている場合には、すぐに取り組める施策は少ないのが実情でしょう。そのため緊急度と重要度の2軸から、優先順位をつけて取り組む必要があります。最初は「緊急が高く重要度も高いもの」に取り組み、次に「緊急度は低いが重要度は高いもの」に取り組み、その次に「緊急度は高いが重要度は低いもの」に取り組みます。「緊急度も重要度も低いもの」については、多少気になる部分があっても、リソースの観点から着手をしないでおきましょう。

現場スタッフの理解を得る

とくに店舗の改革を図る場合には、現場スタッフの理解を得ることが重要です。トップダウンで決めすぎてしまうと、かえって現場に浸透しない恐れがあります。プロジェクトの開始前からコミュニケーションを取り、「何が課題なのか」「どのような状態が理想なのか」といったヒアリングを行います。綿密なコミュニケーションを取ることで、現場に寄り添った施策を考案できるほか、関係者が納得感を持ったうえでプロジェクトを進めることができるでしょう。

社員のITリテラシーを高める

社内でDXを進めるには、まずは社員のITリテラシーを高める必要があります。基礎的なIT知識やデータ分析に関する知識は、今後社内でITツールを活用するにあたって欠かせないスキルです。また社員のITリテラシーが高まることで、ITツールを活用する幅が広がり、想定以上の効果が得られる可能性もあります。eラーニングやアクティブラーニングなどを通じて、可能な限り全社員が学習できる体制を整えましょう。

まとめ

人手不足や消費者ニーズの多様化から、アパレル業界におけるDXはもはや欠かせない取り組みになりつつあります。デジタル技術を活用することで、顧客体験の向上や業務の効率化、新たなビジネスモデルの創出など、さまざまなメリットが期待できます。

しかし、DXの取り組みは一朝一夕に実現できるものではなく、中長期的な視点から取り組む必要があります。また、デジタル技術の活用には高度なIT知識が求められるため、社内でプロジェクトを主導できるメンバーがいない場合には、専門の支援会社に依頼をしましょう。

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