デジタル化が進む中、多くの企業が営業部門でのDX推進に課題を抱えています。しかし、単なるデジタル化と営業DXの違いがわからず、導入に踏み切れないという場合も多いことでしょう。
本記事では、営業DXとデジタル化との違いを明確にし、導入のメリットや成功事例をご紹介します。営業のDX化を検討している方はぜひ参考にしてください。
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営業DXとは
営業DXとは、デジタル技術を活用して営業プロセスを根本から変革し、業務効率の向上や顧客満足度の改善を図る取り組みです。営業活動で得たデータを見える化して組織全体で共有し、顧客の課題を解決できる組織になることが求められています。
デジタル化と営業DXの違い
営業のデジタル化と営業DXは同じように見えますが、実は大きく異なります。デジタル化は既存の業務プロセスをデジタルツールで置き換えることを指すのに対し、DXはビジネスモデルそのものの変革を意味します。たとえば、紙の資料をPDFに変換するのはデジタル化ですが、顧客データを分析してパーソナライズされた提案を自動生成するシステムを構築するのはDXの一例と言えるでしょう。このようにデジタル化と営業DXは似て非なるものなのです。
営業にDXが求められる背景
営業DXが注目される背景には、環境の急速な変化があります。コロナ禍を経て非対面でのコミュニケーションが一般化し、デジタルを活用した営業活動の重要性が増しました。また、働き方改革の推進により多様な働き手のニーズに応えられる環境づくりが必要となりました。このように環境が大きく変化する中で、対応するための施策として営業のDX化が求められているのです。
また、経済産業省が2018年に発表した「2025年の崖」も要因の一つと言えます。2025年の崖とは、既存システムのブラックボックス状態を解消できず、データ活用ができないと、2025年以降最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるという問題です。営業は担当者が同じ顧客と長くやり取りすることが多く、ブラックボックス化しやすい分野です。このままだと大きな経済損失につながる可能性があるため、既存のデータを活用する仕組みづくりや新たなデジタル技術を導入したビジネスモデルの変革、つまり「営業DX」が求められています。
営業DXで得られるメリット
営業DXを推進することで得られる主なメリットは次の4つです。
- 業務を効率化できる
- 属人化を解消できる
- 顧客満足度の向上につながる
- コストを削減できる
順に解説します。
業務を効率化できる
営業DXの大きなメリットに、業務効率化と生産性の向上が挙げられます。繰り返し行う作業の自動化や、AIによる最適な顧客アプローチの提案により、営業担当者は本質的な業務に集中できるようになります。たとえば、顧客情報の入力や報告書の作成などの時間を大幅に削減し、商談や戦略立案により多くの時間を割くことが可能です。
属人化を解消できる
営業は担当者が同じ顧客と長くやり取りすることが多いため、属人化しやすい業務と言えます。そのため、担当者が長期休暇に入ったり退職したりした場合には、顧客が困ってしまう事態になりかねません。DX化で顧客データを社内で共有し、誰でも同じように進められる環境を整備することで、属人化の解消につなげられます。
顧客満足度の向上につながる
営業DXの実現は、データ分析に基づいたパーソナライズされた提案や、迅速かつ的確な情報提供により、顧客満足度を高めることにつながります。また、オンラインとオフラインを融合したシームレスな顧客対応も可能になるため、顧客との関係性をより深められるでしょう。
コストを削減できる
営業DXはコスト削減につながります。オンラインで商談できることにより、営業先の訪問にかかっていた移動時間や交通費をカットできます。移動に使っていた時間を別の業務に充てられるようになるため、業務効率化や負担軽減にも寄与できるでしょう。
営業DXで活用されるツール
営業DXでは目的に応じて必要なツールを選択・活用する必要があります。営業DXで活用されている主なツールを解説します。
- SFA(営業支援システム)
- CRM(顧客関係管理)
- MA(マーケティングオートメーション)
- AI・データ分析ツール
SFA(営業支援システム)
SFA(Sales Force Automation)は、営業プロセスを自動化・効率化するためのツールです。顧客情報の管理、商談進捗の可視化、営業活動の記録など、営業業務の中核を支援します。SFAの導入は営業担当者の業務効率が向上するだけでなく、管理者は営業活動の全体像を把握しやすくなるのもメリットです。最近はAIを活用した次のアクション提案機能を持つ高度なSFAも登場しています。
CRM(顧客関係管理)
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客との関係性を管理・強化するためのシステムです。顧客の基本情報だけでなく、過去の取引履歴、問い合わせ内容、商談の経緯など、顧客に関するあらゆる情報を一元管理します。これにより、顧客ニーズの深い理解やタイムリーな対応が可能です。最新のCRMは、AIによる顧客行動予測機能なども備えており、より戦略的な顧客管理を実現しています。
MA(マーケティングオートメーション)
MA(Marketing Automation)は、マーケティング活動を自動化・効率化するツールです。リード獲得からナーチャリング、営業への引き渡しまでの一連のプロセスを自動化します。たとえば、顧客の行動に応じて最適なタイミングでメールを配信したり、ウェブサイトの閲覧履歴に基づいてパーソナライズされたコンテンツを提供したりすることが可能です。MAの活用により、マーケティングと営業の連携が強化され、より効果的な顧客獲得・育成が実現します。
AI・データ分析ツール
AI(人工知能)やデータ分析ツールは、営業DXにおいて中心的な役割を果たします。膨大な顧客データや営業活動データを分析し、有益なインサイトを抽出します。たとえば、顧客の購買傾向予測、最適な商品推奨、営業担当者のパフォーマンス分析などが可能です。さらに、自然言語処理技術を活用した会話分析ツールにより、商談の質や対話スキルの向上も期待できます。
営業DXを導入する流れ
営業DXを導入する流れを5ステップに分けて解説します。
- 現状分析と課題抽出
- 目標設定
- DXを推進する体制の構築
- 適切なツール・プラットフォームの選定
- 効果検証と改善
1つずつ見ていきましょう。
1:現状分析と課題抽出
営業DXの第一歩は、現状の営業プロセスを詳細に分析し、課題を抽出することです。たとえば、顧客情報の管理方法、商談の進め方、報告の仕組みなどを洗い出し、非効率な部分や改善が必要な点を特定します。この過程では、営業現場の声を丁寧に拾い上げることが重要で、現場のニーズと経営層の視点を統合した分析が求められます。
2:目標設定
現状分析に基づいて具体的な目標を設定します。たとえば「商談成約率を20%向上させる」「顧客応対時間を30%削減する」などです。この際、単なる売上高だけでなく、顧客満足度や営業活動の質を測る指標も含めることが重要です。
3:DXを推進する体制の構築
営業DXを成功させるには、適切な推進体制の構築が不可欠です。通常、経営層、IT部門、営業部門の代表者からなるプロジェクトチームを編成します。このチームは、DX戦略の立案から実行、評価までを一貫して担当します。また、外部のコンサルタントや専門家を招き、客観的な視点や専門知識を取り入れることも効果的です。
4:適切なツール・プラットフォームの選定
営業DXに活用するツールや技術の選定は慎重に行う必要があります。さまざまなツールの中から自社の課題やニーズに最適なものを選びます。この際、単にツールの機能だけでなく、導入後の運用のしやすさやカスタマイズ性、他システムとの連携可能性なども考慮に入れることが重要です。
5:効果検証と改善
ツールを導入したら、設定した目標を達成できているかを確認します。目標に届いていない場合は原因を探し、改善すべき点があればその都度対応します。
営業DXの成功事例
「営業DXのメリットや導入方法は理解できたけど、実際どのような効果が得られているのかが気になる」という方に向けて、ここでは営業DXの成功事例を3つご紹介します。
オンライン商談で受注件数が2倍に(株式会社LIFULL )
株式会社LIFULLは、住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」を運営している会社です。営業は新規開拓と既存顧客に他の物件も掲載してもらう役割をもちます。従来は1日数十件電話をかけてアポをとり、訪問して巡回していたそう。非効率なだけでなく、ブラックボックス化してしまい、失注理由は担当者しか知らない状態でした。
そこで、課題解決のためにインサイドセールス部門を設置し、加えて営業のオンライン化を促進しました。会話の解析機能をもつIP電話「MiiTel」とオンライン商談ツール「ベルフェイス」を導入したところ、訪問にかかる移動時間の短縮に成功。ツールの音声解析を活用することで、客観的な課題の発見やトップ営業担当のデータ共有による営業力の向上にもつながったそうです。
営業スタイルを見直し提案成約率が1.3倍に(株式会社ソアー )
株式会社ソアーは、IT関連機器のコンサルティングや販売をしている会社です。もともとは顧客を訪問してコンサルティングを行っていましたが、働き方改革の一環として訪問販売ではない形での営業スタイルを模索していました。
そこで、Web会議・商談システムの「meet in」を導入したところ、交通費24,000円と月の移動時間12時間の削減に成功。打ち合わせの敷居が下がり満足度が向上、提案成約率が1.3倍になったそうです。
CRMを活用してデータ利活用できる環境に(イーピーエス株式会社 )
医薬品や医療機器、再生医療等製品の開発支援を行っているイーピーエス株式会社では、営業活動後の情報入力が徹底できておらず、ほしい情報をほしいときに探せない状態でした。加えて、使用していた他社システムの費用対効果に課題を感じていたそうです。
そこで、営業管理ツールの「GENIEE SFA/CRM」を導入。活動概要を入力していた営業担当の負荷軽減に成功しました。また、データ集計を意識した項目を設定しデータ利活用が容易になったため、分析は容易になったとのことです。
営業DXを成功させるためのポイント
営業DXはツールを導入するだけでは成功につながりません。次のポイントを押さえることが大切です。
- 導入する目的を明確にする
- 社内の理解と協力を得る
- 段階的に導入する
- 顧客中心の視点をもつ
- 継続的に改善・最適化する
導入する目的を明確にする
営業DXを成功させるためには、導入する目的を明確にすることが重要です。目的がはっきりしていないと導入後に得られた効果を検証できません。ツールを選定する際にも大事な要素となるため、「何を解決するために導入するのか」を明確にしておきましょう。
社内の理解と協力を得る
営業DXは、営業部門だけでなく、マーケティング、IT、人事など、さまざまな部門の協力が必要です。そのため、DXの目的や期待される効果を社内に広く周知し、理解を得ることが欠かせません。説明会や勉強会の開催、成功事例の共有などを通じて、社内の理解と協力を得ましょう。
段階的に導入する
営業DXは段階的に導入し、小さな成功を積み重ねていくことが効果的です。たとえば、営業の中でも1つのチームだけに試験導入し、効果を検証した上で展開していくといった方法があります。各段階で得られた知見や課題を次のステップに活かすことで、より効果的なDXの実現が可能になります。
顧客中心の視点をもつ
営業DXの最終目的は、顧客満足度の向上とそれに伴う業績の改善です。そのため、すべての取り組みにおいて「顧客中心」の視点をもつことが重要です。たとえば、新しいツールやプロセスを導入する際には、それが顧客にどのような価値をもたらすのかを常に考慮しましょう。また、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、継続的な改善に活かすことで、顧客のニーズに応える営業DXを実現できます。
継続的に改善・最適化する
営業DXは、一度導入して終わりではありません。市場環境や顧客ニーズの変化に合わせて、常に改善と最適化を行っていく必要があります。定期的なレビューを実施し、目標の達成状況を確認するとともに、新たな課題や改善点を洗い出しましょう。
まとめ
営業DXは、デジタル技術を活用して営業プロセスを根本から変革し、業務効率と顧客満足度の向上を目指す取り組みです。SFAやCRMなどのツールを活用し、データの可視化と共有を進めることで、属人化の解消やコスト削減にもつながります。導入には現状分析、目標設定、適切なツール選定が重要です。
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