画像認識技術はAI技術の発展とともに急速に進化し、さまざまな分野で活用されています。ただ「画像認識という言葉を聞いたことはあるけど、具体的にはよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、画像認識の概要やおもな種類などを押さえたうえで、開発方法について解説します。開発時の注意点や開発会社を選ぶときのポイントもご紹介していますので、画像認識技術の導入を検討されている方はぜひ参考にしてください。
Table of Contents
画像認識とは
画像認識とは、デジタル画像や動画に映る人や物を、コンピューターが自動的に識別・分類する技術です。学習データに基づき、画像や動画に映る人や物の識別を行います。画像認識の歴史は、1940年代にまで遡ります。バーとスペースを組み合わせて数字や文字を読み取る「バーコード」が始まりでした。その後、コンピューター技術の進歩と機械学習の発展により、今では複雑な画像内容を高精度で認識できるようになりました。
2012年にはディープラーニング技術が登場し、画像認識の精度が飛躍的に向上。さまざまな分野で実用化が進んでいます。
画像認識のおもな種類
画像認識技術にはさまざまな種類があり、それぞれ特定の用途や目的に応じて使用されています。ここでは、画像認識のおもな種類を紹介します。
- 物体認識
- 物体検出
- 文字認識
- 動作認識
- 顔認識(顔認証)
- セグメンテーション
物体認識
物体認識は、画像内に存在する特定の物体を検出し、その物体が何であるかを特定する技術です。たとえば、写真に写っている動物が「犬」なのか「猫」なのかを判別できます。
この技術は、自動運転車の障害物検知やセキュリティカメラでの不審物検出など、幅広い分野で応用されています。
物体検出
物体検出は、画像内の特定の物体を認識し、その位置を特定する高度な画像処理技術です。単なる物体認識とは異なり、対象物の種類だけでなく、画像内での正確な位置情報も提供します。複数の対象物を同時に検出できる能力も持つため、道路を写した画像では、人や車をそれぞれ一度に識別し、それぞれの位置を特定することが可能です。
文字認識
文字認識(OCR:Optical Character Recognition/Reader)は、画像内の文字を検出し、デジタルテキストに変換する技術です。手書き文字や印刷された文字も認識可能で、スキャンした文書のデジタル化や、車のナンバープレート読み取りなど、さまざまな場面で活用されています。
動作認識
動作認識は、動画内の人間の動作やジェスチャーを検出し、分類する技術です。たとえば、人が「歩いている」のか「走っている」のか、「手を振っている」のかを識別することが可能です。
動作認識は、セキュリティシステムでの不審行動検知や、ゲーム・エンターテインメント分野でのモーションキャプチャなどで活用されています。また、スポーツ時の姿勢を動作認識、分析することで、より良い動きになるようフィードバックする場面でも使われています。
顔認識(顔認証)
顔認識は、画像や動画内の顔を検出し、個人を識別する技術です。目や口、鼻など顔の特徴点を分析し、データベースと照合することで個人を特定します。スマートフォンのロック解除や、空港などでの本人確認システム、防犯カメラでの人物特定など、セキュリティ分野で広く使用されている身近な画像認識の一つです。
セグメンテーション
セグメンテーションは、画像を複数の領域に分割し、それぞれの領域を特定の物体・背景として分類する技術です。画像内の各ピクセルがどの物体・背景に属しているかを判別します。この技術は、医療画像解析での臓器の輪郭抽出や、自動運転車での道路と歩道の区別など、精密な画像解析が必要な場面で活躍しています。
画像認識の仕組み
画像認識技術の多くは、ディープラーニングの一種である「畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)」を使用しています。CNNは、人間の視覚野の構造を模倣した階層的なネットワーク構造を持っています。
畳み込みニューラルネットワークは、入力された画像データを畳み込み処理を含む複数の層で段階的に処理していきます。各層で抽出された特徴は、より抽象的で高次の特徴へと変換されていき、最終的に画像の内容を識別するという仕組みです。
学習済みの畳み込みニューラルネットワークモデルは、新しい画像に対しても高い精度で認識を行えます。さらに、画像認識の応用として、GAN(敵対的生成ネットワーク)と呼ばれる深層生成モデルを用いた超解像技術も発展しており、ノイズの多い低解像度画像を高解像度に変換する技術などにも活用されています。
画像認識の活用事例
画像認識技術はさまざまな分野で活用され、業務効率の向上や新しいサービスの創出に貢献しています。ここでは、いくつかの具体的な活用事例を紹介します。
製造業での品質管理
製造業では、画像認識AIを用いて製品の外観検査を自動化し、不良品や規格外品を高速かつ高精度に検出することができるようになりました。人間の目では見逃しやすい微細な欠陥も、AIが24時間365日休むことなく検査することで、品質管理の精度と効率が大幅に向上しています。
また、製造設備や機器をカメラで常時監視し、画像認識AIが異常や不具合の前兆を早期に検出することで、予防保全が可能になりました。突発的な設備故障による生産ラインの停止を防ぎ、生産性の向上につながっています。
医療分野での診断支援
医療分野では、レントゲン、MRI、CTなどの画像をAIが解析し、異常部位の検出や疾患の早期発見を支援しています。たとえば、胸部X線画像から肺がんの兆候を検出したり、網膜画像から糖尿病性網膜症を診断したりするAIシステムが開発されているのです。
さらに、AIによる病理画像の解析技術も進歩しており、顕微鏡画像からがん細胞を自動検出するなど、病理医の診断を補助する役割を果たしています。AI技術を活用することにより、医師の負担軽減と診断精度の向上が期待されています。
自動運転技術への応用
自動運転技術において、画像認識は極めて重要な役割を果たしています。車載カメラやセンサーを用いて周囲の環境をリアルタイムで認識し、道路標識や信号機、他の車両、歩行者などを正確に検出することが可能です。
AIは前方や周囲の障害物を瞬時に検知し、衝突を避けるための適切なアクションを判断します。たとえば、前方に歩行者を検知した場合は減速や停止を行い、隣車線の車両を検知した場合は安全な車線変更のタイミングを判断して教えてくれるのです。
AIを活用することにより、人間のドライバーよりも安全で効率的な運転が可能になると期待されています。
画像認識システムの開発方法
画像認識システムの開発は、以下のような段階を経て行われます。
- 解決したい課題の明確化
- 必要なデータの収集
- モデルの選択と設計
- 学習のモデルの調整
- システムの実装とテスト
- メンテナンス
1:解決したい課題の明確化
画像認識システムの開発を始める前に、まず解決したい課題を明確にすることが重要です。どのような問題を解決したいのか、どのような機能が必要なのか、予算はどの程度かなどを具体的に定義しましょう。
課題が明確になれば必要な機能や予算を適切に設定でき、効果的なシステム開発につながります。開発の進捗を評価する際の基準にもなるため、まずは目的を明確にすることを意識してください。
2:必要なデータの収集
画像認識AIの性能は、学習に使用するデータの質と量に大きく依存します。そのため、必要なデータを特定し、対象となる画像データを大量に収集することが重要です。
データ収集の方法としては、既存データの利用やアンケートによるデータ収集、自社での撮影・収集などがあります。収集したデータは適切にラベル付けを行い、学習用データとして整理しましょう。
3:モデルの選択と設計
目的に応じて適切なAIモデルを選択します。一般的な物体認識には畳み込みニュートラルネットワーク(CNN)が広く使用されていますが、新しいアーキテクチャも登場しています。
モデルの選択後は、ネットワークの層数や各層のパラメータなど、具体的な設計を行います。この段階では、AIの専門知識が必要となるため、経験豊富なエンジニアや研究者の協力が重要です。
4:学習とモデルの調整
収集したデータを用いてモデルの学習を行います。学習には大量の計算リソースが必要となるため、GPUを搭載した高性能コンピューターやクラウドサービスを利用することが一般的です。
学習後は、テストデータを用いてモデルの性能を評価し、必要に応じて調整します。目標とする精度に達するまで、繰り返し行います。
5:システムの実装とテスト
学習したモデルを実際のシステムに組み込み、テストを行います。モデルの推論速度、メモリ使用量なども考慮し、必要に応じてモデルの軽量化やハードウェアの最適化を行います。
また、実際の使用環境での動作確認も重要です。たとえば、照明条件の変化や背景ノイズなど、実環境でのさまざまな要因に対するシステムの動作を確認しましょう。
6:メンテナンス
画像認識システムを実装した後も、定期的なメンテナンスが必要です。新しいデータで定期的に再学習を行い、モデルの性能を維持・向上させましょう。また、ユーザーからのフィードバックを収集し、システムの改善に活かすことも大切です。継続的な改善により、システムの価値維持につながります。
画像認識システム開発における注意点
画像認識システムを開発する際には、技術面だけでなく、法律や倫理面でも注意が必要です。ここではおもな注意点を3つ挙げます。
個人情報保護や肖像権などに配慮する
画像認識システム、特に顔認識システムを開発・運用する際は、個人情報保護法や肖像権に十分配慮する必要があります。収集した画像データの取り扱いには細心の注意を払い、適切なセキュリティ対策を実施することが重要です。
また、ユーザーに対して、どのようなデータが収集され、どのように使用されるのかを明確に説明し、同意を得ることも忘れてはいけません。透明性の高い運用を行い、ユーザーの信頼を得られるようにしましょう。
継続的な学習と改善を行う
画像認識システムは、一度開発して終わりではありません。新たなデータを用いて継続的に学習を行い、性能を向上させることが重要です。特に、時間の経過とともに変化する対象を認識する場合は、定期的な再学習が不可欠です。
また、システムの誤認識や誤動作の事例を収集・分析し、改善に活かすことも大切です。ユーザーからのフィードバックを積極的に取り入れ、システムの精度と信頼性を向上させていきましょう。
必要な精度を確保する
画像認識システムの性能は、用途に応じて必要な精度が異なります。たとえば、医療診断や自動運転など、人命に関わる用途では極めて高い精度が求められます。
最低限必要な精度が出せなければ、そのシステムは実用に耐えません。開発の初期段階で目標とする精度を明確に設定し、その精度を達成するまで改良を重ねることが重要です。また、実環境での性能評価も十分に行う必要があるでしょう。
画像認識システム開発企業を選ぶポイント
画像認識システムの開発を外部に委託する場合、適切な開発企業を選ぶことが重要です。ここでは、企業選びの重要なポイントを紹介します。
- 画像認識システム開発の実績
- 開発にかかるコスト
- 導入後のサポートやメンテナンス体制
画像認識システム開発の実績
AI開発にはさまざまな専門分野があります。そのため、画像認識に特化した開発実績を持つ企業を選ぶことが重要です。過去のプロジェクト事例や、開発したシステムの性能データなどを確認し、自社の課題解決に適した経験と専門知識を持つ企業を選びましょう。
また、類似した業界や用途での開発経験があれば、業界特有の課題や規制にも精通している可能性が高く、スムーズな開発が期待できます。さらに、最新の画像認識技術に関する研究開発や学会発表などの実績があれば、より高度な技術力を有していると考えられるでしょう。
開発にかかるコスト
画像認識システムの開発コストは、プロジェクトの規模や複雑さによって大きく異なります。そのため、課題や目的を明確にして、必要最小限の機能から始めることが重要です。
開発企業に見積もりを依頼する際は、初期開発コストだけでなく、運用・保守にかかる費用も含めた総コストを確認しましょう。また、段階的な開発を提案してくれる企業であれば、コストを抑えながら段階的にシステムを改善できます。
コストは重要な要素ですが、高品質なシステムは長期的には運用コストの削減につながる可能性があります。単に安価な企業を選ぶのではなく、費用対効果を十分に検討することが大切です。
導入後のサポートやメンテナンス体制
画像認識システムは、導入後も継続的な学習や改善が必要です。そのため、長期的なサポート体制が整っている企業を選びましょう。具体的には、「システムの運用レポート」「データの追加学習」「セキュリティアップデート」などを確認してみてください。
また、サポート契約の内容や期間、料金体系なども事前に確認し、長期的な運用コストを見積もっておくことが大切です。
まとめ
画像認識技術はAI技術の発展とともに急速に進化し、さまざまな分野で活用されています。画像認識システムの開発は、単に技術を導入するだけでなく、課題解決や新たな価値創造につながる戦略的な取り組みです。そのため、自社の課題や目的を明確にし、適切な技術と開発会社を選択することが重要となります。
株式会社オルツでは、パーソナル人工知能を中心としたAI活用・LLM開発・DX推進を支援しています。ヒアリングからコンサルティング、実証実験、開発、運用まで一気通貫でご支援が可能です。画像認識を活用したシステムにご興味がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。