近年の小売業界では、人手不足や競争環境の激化、在庫廃棄の問題など、さまざまな課題に直面しています。これらの課題を解決し、今後も持続的な成長を実現させるためには、新たな技術の導入が不可欠です。なかでも最近注目を集めているのが「人工知能(AI)」の活用です。AIを活用することで、生産性の向上やコストの削減、マーケティング力の強化など、多岐にわたるメリットを期待できます。
本記事では、小売企業がAIを活用する方法について解説します。導入のメリットや企業事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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小売企業が抱えている課題
小売企業が抱えている課題としては、下記のようなものが挙げられます。
- 人手不足
- 競争環境の激化
- 在庫廃棄の問題
人手不足
多くの小売企業では、少子高齢化による労働人口の減少や、働き方改革の推進に伴う労働時間の減少により、深刻な人手不足に悩まされています。また、採用コストや最低賃金の高騰により、人材を雇用するハードルも高くなっているのが実情です。このような背景から、業界全体でAIを活用した業務自動化/効率化のニーズが高まっています。
競争環境の激化
ECサイトの普及やディスカウントストアの台頭により、小売企業の競争環境は近年激しさを増しています。また、消費者のニーズは多様化しており、従来型の大量生産・大量消費型のビジネスモデルでは、日本国内での競争はもはや通用しなくなりつつあります。
このような競争環境に立ち向かうには、まずは外部環境の変化と自社の置かれた状況を正確に把握することが重要です。データの集計・分析を通じて、新たなニーズを素早くキャッチアップし、施策に落とし込んでいく体制が求められます。データの活用には、IT技術に関する知識や経験が求められるため、専門性の高い人材の雇用や、外部業者への依頼なども視野に入れる必要があります。
在庫廃棄の問題
商品の流行り廃れや賞味期限切れなどが原因で、在庫廃棄になる商品も少なくありません。需要をうまく予測できず、在庫過多に悩まされている事業者も多いでしょう。過剰な在庫を抱えることは、効率的な資金運用を阻害し、企業の収益性を低下させる要因となるため注意が必要です。
受発注業務や需要予測の場面でAIを活用することで、このような問題を防ぐことができます。過去の売上データだけでなく、直近の売上・顧客属性・需要変化などを考慮して、最適な需要を算出することが可能です。
小売企業がAIを導入するメリット
小売企業がAIを活用することで、下記のようなメリットがあります。
- 生産性の向上
- コストの削減
- マーケティング力の強化
生産性の向上
AIを活用して業務を自動化することで、従来まで手動で行われていた業務が不要になります。従業員は業務負担が軽減され、より生産的な業務に時間を割くことができるため、社内全体の生産性を向上させることができます。また、手動のときに比べてミスの量が減少するため、残業時間の削減にもつながります。
コストの削減
AIによる業務の自動化は、人件費の削減に繋がります。とくに最低賃金が高騰している近年では、企業の収益性向上に大きく貢献します。さらに、AIによる需要予測は過剰在庫を抑制して、在庫管理コストを削減します。
AIを導入するには一時的な費用が必要ですが、それを「コスト」と見るか「投資」と見るかで捉え方は変わります。多くの小売企業では、中長期的に見てAIの活用は欠かせない取り組みのため、早めの段階から着手をするのがおすすめです。
マーケティング力の強化
近年では、百貨店や家電量販店などの大型店舗を持つ企業でも、自社ECサイトを構えた販売に力を入れ始めています。
ECサイトでAIを活用することで、顧客の購買履歴や嗜好を分析し、一人ひとりに合わせた商品やサービスを提供できます。パーソナライズ化された接客は、購入率や購入単価の向上につながるため、マーケティング力の強化につながります。
また、AIを活用したチャットボットを導入することで、顧客からの問い合わせにも迅速に対応し、顧客満足度の向上に貢献します。顧客満足度が向上することで、リピート率も向上するため、既存顧客の集客にかかる費用を削減することができます。
小売企業でAIを導入した事例
小売企業でAIを導入した企業事例をご紹介します。
株式会社イトーヨーカ堂
株式会社イトーヨーカ堂では、AIを活用した商品発注システムを導入。価格や商品陳列の列数などの店舗情報、気温や降水確率などの天候情報、曜日や客数などの基本情報をAIが学習し、最適な販売予測数を発注者に提案します。本システムにより、発注担当者は発注作業にかかる時間を削減できるほか、在庫の過不足を防ぐことができます。実際に、実証実験の際には発注作業にかける時間を平均約3割短縮できたようです。
参照:発注業務を効率化し、接客や売場づくりをより強化「AI(人工知能)発注」の仕組みを全店に導入|株式会社イトーヨーカ堂
株式会社ファミリーマート
株式会社ファミリーマートでは、2023年度までに約5,000店舗で人型AIアシスタントの導入を進めています。本システムにより、店舗運営に必要な情報や発注のアドバイス、売場作りのポイントなどを各店舗に提供することが可能です。店舗管轄者であるスーパーバイザーと合わせて、店舗運営のサポートにあたります。本システムは、店舗に設置されたタブレットからアクセスできるため、もらったアドバイスを売り場に即時反映させることができます。
参照:店長業務をサポートする人型AIアシスタントを 2023年度末までに5000店舗へ導入 ~個店毎の運営状況に合わせ、最適なデータを提供し、店舗の省力化に貢献~|ニュースリリース|ファミリーマート
株式会社トライアルカンパニー
株式会社トライアルカンパニーでは、AIカメラを活用した「24時間顔認証決済」を実現しました。セルフレジ決済が可能で、日本で初めて顔認証時の年齢確認が不要な店舗となります。1号店となる「TRIAL GO 曰佐店」では、18歳以上であれば店頭での登録後は誰でも利用可能です。同社ではデータの活用や分析を進めて、今後は他店舗での導入拡大を目指しています。
まとめ
AIは、小売業界の課題解決に不可欠な技術となります。生産性の向上・コストの削減・マーケティング力の強化は、各企業で叫ばれる課題であり、今後の競争環境で生き残るには欠かせない取り組みです。
しかし、AIの導入にはシステムの導入費用や従業員の教育といった、さまざまな課題も存在します。そのため、AIを効果的に活用するためには、企業全体でデジタル化を進めて、人材育成にも力を入れていく必要があります。今後、AI技術はますます進化していくことが予想されるため、各企業ではAIの最新トレンドを常に把握し、自社のビジネスモデルに合った活用方法を模索していくことが求められるでしょう。
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